医をめぐる情景

人生を踏み出す上り坂

上田諭・東京医療学院大学教授
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 深層心理や無意識を研究したスイスの精神科医カール・グスタフ・ユングは、無意識を独自にとらえようとした。無意識には個人のものだけでなく、すべての人の心をつなげる普遍的な「集合的無意識」があることを提唱した。世界各地に存在する似たような神話や睡眠中に人がみる夢は、そこから生まれてくるのだと考えた。日常で時々起きる偶然の一致にも何らかの意味があると説き、「意味のある偶然の一致」と呼んだ。これらの考え方を中心とした「ユング心理学」はいまも知られている。

 ユングの考え方の一つに、人生を四つの時期に分けるというものがある。少・青年期と成人前期を「人生の午前」、中年期と老年期を「人生の午後」と名付け、人生の課題が増えていく午後が始まる「正午」は40歳前後と定義づけた。

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上田諭

東京医療学院大学教授

うえだ・さとし 京都府生まれ。関西学院大学社会学部では福祉専攻で精神医学のゼミで学ぶ。卒後、朝日新聞に記者で入社したが、途中から内勤の編集部門に移され「うつうつとした」日々。「人生このままでは終われない」と、もともと胸にくすぶっていた医学への志向から1990年、9年勤めた新聞社を退社し北海道大学医学部に入学(一般入試による選抜)。96年に卒業、東京医科歯科大学精神神経科の研修医に。以後、都立の高齢者専門病院を中心に勤務し、「適切でない高齢者医療」の現状を目の当たりにする。2007年、高齢者のうつ病治療に欠かせない電気けいれん療法の手法を学ぶため、米国デューク大学メディカルセンターで研修し修了。同年から日本医科大学(東京都文京区)精神神経科助教、11年から講師、17年4月より東京医療学院大学保健医療学部教授。北辰病院(埼玉県越谷市)では、「高齢者専門外来」を行っている。著書に、「治さなくてよい認知症」(日本評論社、2014)、「不幸な認知症 幸せな認知症」(マガジンハウス、2014)、訳書に「精神病性うつ病―病態の見立てと治療」(星和書店、2013)、「パルス波ECTハンドブック」(医学書院、2012)など。