10歳若返る歩行術 -インターバル速歩-

【番外編】乳酸は疲労物質か?それともエネルギー源か?

能勢博・信州大学教授
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 前回の記事「インターバル速歩が楽になるサプリ」で、「5-アミノレブリン酸(ALA)が乳酸の産生を抑制することで、運動トレーニングの実施率を改善する」という内容を解説したところ、一部の読者から「最近、乳酸は疲労物質ではなく、エネルギー源として使用されていることが明らかになっているはず、おかしい」というコメントをいただきました。最初はなぜ、このような指摘が出るのか戸惑いましたが、今回はこの連載の「番外編」として、この指摘について私の考えをお話ししましょう。

 まず、初めに乳酸の産生経路について説明します。筋肉を構成する筋細胞は、筋収縮時にATP(アデノシン3リン酸)という化学物質を必要とします。通常、ATPの大部分はミトコンドリアの中で酸素を消費して作られるのですが、運動開始直後には筋細胞内に酸素が十分存在せず、激しい強度で運動をした場合は、呼吸による酸素の供給も追いつきません。そのような場合に、どのようにしてATPを産生するのでしょうか。

 実は、酸素を必要とせずにATPを産生する仕組みがあるのです。これを「解糖系」または「無酸素性代謝経路」と呼びます。この経路は、前述の酸素を消費してATPを産生する「有酸素性代謝経路」に比べATPの産生速度が2.5倍に達し、激しい運動に伴う高速の筋収縮にすばやくエネルギーを供給できます。この「無酸素性代謝経路」の最終産物が「乳酸」です。

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能勢博

信州大学教授

のせ・ひろし 1952年生まれ。京都府立医科大学医学部卒業。京都府立医科大学助手、米国イエール大学医学部博士研究員、京都府立医科大学助教授などを経て現在、信州大学学術院医学系教授(疾患予防医科学系専攻・スポーツ医科学講座)。画期的な効果で、これまでのウオーキングの常識を変えたと言われる「インターバル速歩」を提唱。信州大学、松本市、市民が協力する中高年の健康づくり事業「熟年体育大学」などにおいて、約10年間で約6000人以上に運動指導してきた。趣味は登山。長野県の常念岳診療所長などを歴任し、81年には中国・天山山脈の未踏峰・ボゴダ・オーラ峰に医師として同行、自らも登頂した。著書に「いくつになっても自分で歩ける!『筋トレ』ウォーキング」(青春出版社)、「山に登る前に読む本」(講談社)など。