これまでの栄養学は「何を、どれだけ」食べるかを考えて研究されてきました。時間栄養学は、さらに「いつ?」を考えることで、体内時計に合った食生活リズムを研究する学問です。前回は、1日12時間以内に食事を取ると、体内時計のメリハリがつき、ダイエットに効果的だという話でした。今回は、食事の時刻を変えることで得られる、ダイエット以外の効果について紹介したいと思います。

 まずは、老化と体内時計の関係についてです。私たちの体内時計は、老化と共に衰えていくことが分かっています。特に、体温の日内変動、または睡眠ホルモンであるメラトニンの日内変動などの、1日の変動幅が小さくなり、メリハリが弱くなっていきます。また、夜間の中途覚醒(夜中に目が覚めること)が増え、深い睡眠も減っていきます。一方、マウスを用いた研究では、脳内にある中枢時計の機能が加齢とともに低下し、時差ボケに対する応答も悪くなることが分かっています。つまり、海外旅行に行った際に、現地の時刻に合わせるのに時間がかかるようになる、というイメージです。

 このような体内時計の機能低下を時間栄養学で予防した研究を一つ紹介します。実はヒトやマウスを対象にした研究ではなく、ショウジョウバエを用いた研究です。ショウジョウバエは、寿命が8週間(2カ月)くらいなので、時間のかかる老化研究には最適なモデル生物なのです。

この記事は有料記事です。

残り1392文字(全文1971文字)

柴田重信

早稲田大学教授

しばた・しげのぶ 1953年生まれ。九州大学薬学部卒業、薬学研究科博士修了。九州大学助手・助教授、早稲田大学人間科学部教授などを経て、2003年より早稲田大学理工学術院教授。薬学博士。日本時間生物学会理事、時間栄養科学研究会代表。時間軸の健康科学によって健康寿命を延ばす研究に取り組む。専門は時間栄養学、時間運動学とその双方の相乗効果を健康に活かす商品・プログラム開発。田原助教との共著に「Q&Aですらすらわかる体内時計健康法-時間栄養学・時間運動学・時間睡眠学から解く健康-」(杏林書院)。

田原優

カリフォルニア大学ロサンゼルス校助教

たはら・ゆう 1985年生まれ。早稲田大学理工学部、同大学大学院先進理工学専攻卒業。博士(理学)。早稲田大学助手を経て、2015年より早稲田大学高等研究所助教、17年1月よりカリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部助教。07年より、柴田重信教授と共に、時間栄養学研究の確立に取り組んできた。また、発光イメージングによるマウス体内時計測定、ストレスによる体内時計調節などの成果も発表している。常にヒトへの応用を意識しながら、最先端の基礎研究を行っている。柴田教授との共著に「Q&Aですらすらわかる体内時計健康法-時間栄養学・時間運動学・時間睡眠学から解く健康-」(杏林書院)。