街場の医療塾 つるばあさんの上手な医者の使い方

“いま、ここにある痛み”から生まれる関係

桜井隆・さくらいクリニック院長
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 クリニックの外来を初めて訪れた患者さんとお会いする場面は、患者さんも私も、双方がちょっと緊張する瞬間だ。

 「はじめまして、桜井です、今日はどうなさいましたか?」

 マニュアルどおりのあいさつから入って相手にちょっと目線をあわせ、会釈してから問診表に目を落とす。

手書きの問診票が持つ情報量

 手書きの問診票はいろいろな情報を与えてくれる。今までのつらい病気の経過をきちょうめんに書かれる方、痛いところを記入する人体図にあちこち大きな印をつけて痛みを訴えようとなさる方、ほとんどなにも書いていない方。文字自体の勢いや大小、細かいふるえ、漢字ひらがなの使い方、誤字脱字、そして文章そのもの。そこには痛みや不安といった健康に関するさまざまな問題を抱えて、わざわざ初めてのクリニックに足を運ぶという高いハードルを越えて来られる患者さんたちの思いが詰まっている。最近は待合室でタブレットに入力すれば電子カルテに情報が飛んでいく問診票もあるようだが、それでは本人の個性、性格など多彩な情報が共有できないのでは、と思ってしまう。

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桜井隆

さくらいクリニック院長

さくらい・たかし 1956年、兵庫県尼崎市生まれ。81年、群馬大学医学部卒業。兵庫医科大学内科、大阪大学整形外科などを経て92年、同市でさくらいクリニックを開業。当初から在宅でのみとりを支援し続け、現在までに350人あまりをみとってきた。内科、整形外科、リウマチ専門医。内科、整形外科両サイドの経験から「あなたとあなたの家族の専門医」をめざす。20年にわたり、宝塚歌劇団の主治医も務める。主な著書に「先生‥すまんけどなぁ…」(エピック)、「大往生なんか、せんでもええやん!」(講談社)。さくらいクリニックウェブサイト