前々回から、私たちと同じく体内時計の専門家である明治大学農学部の中村孝博先生に、ヒトのライフサイクルのステージごとに起きる体内時計の変化や、それに伴う身体的不調についてお聞きしています。今回は、「週末の夜更かし朝寝坊が不妊を招く?」と題して、現代日本の社会問題である少子化対策の一助となる研究について伺いました。

 前々回の記事の復習になりますが、女性は思春期から更年期までの間、月経周期によって女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンの分泌量が大きく変化します。この大きな変動は、睡眠を障害するなど、日内リズムへの影響を及ぼします。マウスやラットなどのげっ歯類を用いた中村先生らの研究から、女性ホルモンには時計遺伝子のリズムに影響し、体内時計システムを乱す作用があることが明らかになっています。

 これは、生殖機能に関わるホルモンである女性ホルモンが、体内時計に影響を及ぼすということですが、その逆のプロセスも起こりうるのでしょうか。つまり「体内時計が生殖機能に影響を及ぼす可能性はあるのか」という問いです。今回は体内時計の生殖機能への影響、特に生理不順や不妊にどう関係するかについて考えたいと思います。

この記事は有料記事です。

残り2680文字(全文3185文字)

柴田重信

早稲田大学教授

しばた・しげのぶ 1953年生まれ。九州大学薬学部卒業、薬学研究科博士修了。九州大学助手・助教授、早稲田大学人間科学部教授などを経て、2003年より早稲田大学理工学術院教授。薬学博士。日本時間生物学会理事、時間栄養科学研究会代表。時間軸の健康科学によって健康寿命を延ばす研究に取り組む。専門は時間栄養学、時間運動学とその双方の相乗効果を健康に活かす商品・プログラム開発。田原助教との共著に「Q&Aですらすらわかる体内時計健康法-時間栄養学・時間運動学・時間睡眠学から解く健康-」(杏林書院)。

田原優

カリフォルニア大学ロサンゼルス校助教

たはら・ゆう 1985年生まれ。早稲田大学理工学部、同大学大学院先進理工学専攻卒業。博士(理学)。早稲田大学助手を経て、2015年より早稲田大学高等研究所助教、17年1月よりカリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部助教。07年より、柴田重信教授と共に、時間栄養学研究の確立に取り組んできた。また、発光イメージングによるマウス体内時計測定、ストレスによる体内時計調節などの成果も発表している。常にヒトへの応用を意識しながら、最先端の基礎研究を行っている。柴田教授との共著に「Q&Aですらすらわかる体内時計健康法-時間栄養学・時間運動学・時間睡眠学から解く健康-」(杏林書院)。