実践!感染症講義 -命を救う5分の知識-

野口英世の命を奪った黄熱のいま

谷口恭・太融寺町谷口医院院長
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 世界一恐ろしい生物=蚊がもたらす感染症で最も死亡者が多いのはダントツでマラリアです(注1)。以前紹介したように年間60万人以上が死亡しています。

 マラリアに次いで、死亡者が多い蚊が原因の感染症は何でしょう。今年(2016年)何かと話題になったジカ熱は、ギランバレー症候群という神経の病気になるリスクがあり、妊婦が感染すると生まれてくる赤ちゃんが小頭症を生じる可能性がありますが、感染して死亡することはほとんどありません。今年日本人女性が死亡したことで話題になったデング熱は年間約2万数千人が死亡、前回紹介した日本脳炎も同程度です。これらは蚊が原因の「死に至る病」としては、3位と4位に相当するのではないかと、私は考えています。

 では第2位は何か。「黄熱」です。世界保健機関(WHO)の発表では年間死亡者数が2万9000~6万人とされています(注2)。今年1年を振り返って、日本のメディアでは「黄熱」という言葉はあまり聞かなかったかもしれませんが、アフリカでは最も話題になった感染症のひとつであり、また中国でも取り上げられる機会が何度かありました。黄熱はアフリカと南米にしか存在しませんから、我々日本人には縁のない感染症と考えて…

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谷口恭

太融寺町谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。太融寺町谷口医院ウェブサイト