実践!感染症講義 -命を救う5分の知識-

今日から使えるノロウイルス対処法

谷口恭・太融寺町谷口医院院長
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 ノロウイルスが疑われた場合、健康な成人で水分摂取が可能なら、私は「いろんな種類のペットボトル飲料を大量に買い込んでトイレにこもってください。しっかり水分を取ってしっかり便を出す。それが治療です」と言って一切の処方をおこなわないことがあります(注1)。薬を出すとしても整腸剤と胃薬くらいです。解熱剤は胃腸に負担がかかる場合がありますし、そもそも健康な成人が一時的に発熱したくらいでは大事に至りませんから、使う必要はありません。「薬や検査は最小限にすべし」は私がいつも言っている言葉です。

 前回はノロウイルスにまつわる「誤解」二つを説明しました。ノロウイルス検査の「感度」の話、そして特効薬がない話です。今回は三つ目の「誤解」について話したいのですが、その前に一つ目の「誤解」、検査の話の補足をしておきます。

 私は前回、「ノロウイルスを疑って医療機関を受診した場合、検査結果に関わらず治療方針は変わらない」という理由から検査を勧めないと書きました。ただし入院後は別です。ノロウイルスが原因か否かは別にして、入院せざるを得ないケースは「重症」と考えます。このようなケースでは、病原体が何かを確定する必要があります。ノロウイルスだと思っていたが実は細菌感染だった、見込み違いで抗菌薬投与のタイミングが遅れた、とい…

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谷口恭

太融寺町谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。太融寺町谷口医院ウェブサイト