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“クスリはリスク”多すぎる薬が生む問題

桜井隆・さくらいクリニック院長

どんどん薬が増えていく高齢者

 「ポリファーマシー(polypharmacy)」という言葉をご存じだろうか? 「ポリ(poly)」という接頭語は複数の、多いという意味。反対は「モノ(mono)」だ。例えばポリネシアは多くの島を、ポリリズムは重なるリズムを意味する。その「ポリ」と薬を意味する「ファーマシー」をくっ付けて、おおむね5~6種以上の薬を飲んで、何か問題が起こっている状態のことを、ポリファーマシーという。10種類の薬を飲んでいても、副作用なく本人の病気がきちんとコントロールされているなら問題はなく、ポリファーマシーともあまり言わない。しかし高齢者は多くの病気を抱えていることが多く、あちこちの病院、薬局で薬をもらうために、おのずと薬が多くなるのが現状だ。

 たとえば88歳のつるばあさん、高血圧、糖尿病、気管支ぜんそく、骨粗しょう症、便秘に不眠、さらに腰痛で困っている。となると、一つの病気に1剤としても7種類。1剤で済めばいいが、なかなかそうはいかず、降圧剤が2種類、血糖降下剤が2種類、痛み止めが胃を荒らさないように胃薬も、となるとあっというまに10種類を超えてしまう。薬が多くなるほど副作用の可能性が高くなるのは明らかだが、特に5種類以上の薬を併用す…

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さくらいクリニック院長

さくらい・たかし 1956年、兵庫県尼崎市生まれ。81年、群馬大学医学部卒業。兵庫医科大学内科、大阪大学整形外科などを経て92年、同市でさくらいクリニックを開業。当初から在宅でのみとりを支援し続け、現在までに350人あまりをみとってきた。内科、整形外科、リウマチ専門医。内科、整形外科両サイドの経験から「あなたとあなたの家族の専門医」をめざす。20年にわたり、宝塚歌劇団の主治医も務める。主な著書に「先生‥すまんけどなぁ…」(エピック)、「大往生なんか、せんでもええやん!」(講談社)。さくらいクリニックウェブサイト