いよいよ2017年の東京マラソンが目前に迫ってきました。その1週間前には京都マラソンもあります。参加される人の中には、4月の長野マラソンのエントリーもできた、という方もいるでしょう。そして、京都、東京から長野の2カ月弱の間にもう一つぐらいフルマラソンを走っておきたい、そうしないと体が維持できないのでは?と考えている人も結構いるはずです。皆さん、マラソンをはじめると、次々に大会にエントリーしてしまうという傾向があります。

 よくフルマラソンを走った後の疲労は1カ月ぐらいで取れる、などと言われます。そのことを証明する科学論文はありませんが、多くのランナーの診察をしていると、1カ月でほぼ疲労が取れて、元通りランニングができる状態になると感じられます。しかしそれはあくまで「ランニングができる」というレベルに過ぎません。持てる力のすべてを出し切ってフルマラソンを走った人が、次に再び全力で走れるのは3カ月後、というのが私の実感です。

 そこで、その「実感」を科学的に検証してみることにしました。方法は簡単ですが、実に大変な労力を要しました。ある1人のランナー、つまり私自身が、毎月の月間走行距離を200kmと定めたうえで、定期的にマラソン大会に参加します。その間に、性ホルモンであるテストステロンの分泌量を測定してみる、という方法で行いました。

 マラソン大会は冬季に集中するため、毎月出場した期間もあれば、参加月→休養月→参加月、という感じで、ひと月の休養月を入れた期間、さらに休養月をふた月入れた期間もありました。まずは、計約4年間に及ぶ検証の全体像から紹介します(この研究は2014年日本Men's Health医学会で発表し、会長賞を受賞しました)。

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奥井識仁

よこすか女性泌尿器科・泌尿器科クリニック院長

おくい・ひさひと 1999年東京大学大学院修了(医学博士)後、渡米し、ハーバード大学ブリガム&ウイメンズ病院にて、女性泌尿器科の手術を習得する。女性泌尿器科とは、英語でUrogynecology。“Uro”は泌尿器科、“Gynecology”は婦人科を意味し、“Urogynecology”で、両科の中間にあたる部門という意味がある。都内の複数の大学病院から専門領域の診療に関する相談を受けながら、「よこすか女性泌尿器科・泌尿器科クリニック」を運営し、年間約800件の日帰り手術を行っている。水泳、マラソン、トライアスロンなどのスポーツ、音楽(サックス演奏)が趣味で、さまざまなスポーツ大会にドクターとして参加している。著書に「人生を変える15分早歩き」「ドクター奥井と走るランニングのススメ」(いずれもベースボールマガジン社)など。