実践!感染症講義 -命を救う5分の知識-

クロストリジウム・ディフィシル 病院がその牙城

谷口恭・太融寺町谷口医院院長
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 抗菌薬の使用により、腸内でクロストリジウム・ディフィシル(以下「CD」)が増えるとどうなるのでしょうか。CDが病原性を発揮し始めると、通常はまず下痢が生じます。とはいえ、日ごろ健康な人が抗菌薬を内服して下痢が生じたときに「CDで死ぬんじゃないか……」とまで考える必要はありません(ただし、高齢者や基礎疾患を持っている人の場合はその限りではありません。抗菌薬の使用は必要時のみにしなければならないという原則は変わりません)

 実際にCDが問題となるのは医療機関に入院したときです。何らかの疾患で入院した場合、抗菌薬を投与されることがよくあります。手術を受けた場合はほぼ100%使われますし、手術目的でない入院の場合にも処方されることがあります。自分自身には投与されなかったとしても、同室の患者さんに使われていることもあります。

 また、病院で働く医療者は院内感染を防がねばなりませんから、頻繁に手指の消毒をおこないます。各病室やナースステーションの入り口には必ずアルコールの簡易消毒剤が置かれているはずです。ところが、CDはアルコールやその他の一般的な消毒薬がほとんど効きません。ということは、医療者がアルコールを用いた手指の消毒をすればするほど、ちょうど抗菌薬を用いたときの腸内と同じようにCDばかりが多数残る、という皮肉な結…

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谷口恭

太融寺町谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。太融寺町谷口医院ウェブサイト