医療プレミア特集

ボツリヌス症 死に至る猛毒の恐怖

藤野基文・毎日新聞 医療プレミア編集部
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ボツリヌス菌の写真は米疾病対策センター(CDC)ウェブサイトより転載
ボツリヌス菌の写真は米疾病対策センター(CDC)ウェブサイトより転載

 東京都足立区で3月、生後6カ月の男児が「乳児ボツリヌス症」で死亡した。離乳食として与えられていた蜂蜜が原因だったことから、乳児を持つ親の間に衝撃が広がっている。しかし、ボツリヌス症は乳児だけの病気ではない。病気を引き起こすボツリヌス毒素は自然界に存在する中で最強といわれる猛毒で、その作用により神経が侵されて重症になる危険性は、大人を含めた誰にでもある。

 2012年3月24日の未明、まぶたが垂れ下がるなどの異常を感じた鳥取県米子市の60代の夫婦が救急車を呼び、病院に運ばれた。病院到着時には2人とも受け答えはできたが、ろれつが回らず、ふらつきがあり、物が二重に見えるなどの症状があった。さらに夫は呼吸困難も訴えていた。搬送から約4時間後、夫婦共に心肺停止状態になる。命は取り留めたものの、発症から3カ月後の時点で、夫婦共に人工呼吸器をはずせずにいた。夫は意識的に体の一部を動かせるようになったが、妻は全く受け答えができないままだった。

 夫婦の便からはボツリヌス菌と毒素が、血液からはボツリヌス毒素が検出された。県と国立医薬品食品衛生研究所の調べで、自宅に残された食品のうち真空パックで販売された岩手県の郷土料理「あずきばっとう」の食べ残しからボツリヌス菌と毒素が検出された。幅の広いうどんを小豆の汁で煮込んだ食べ物で、夫婦は前日の昼ごろにそれを食べていた。

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藤野基文

毎日新聞 医療プレミア編集部

ふじの・もとふみ 1977年生まれ。2004年に毎日新聞社入社。甲府支局などを経て、10年から東京本社科学環境部で、医療・医学、環境省、ノーベル賞などを担当。医療・医学分野では、臓器移植、感染症、脳神経科学、再生医療などを取材した。17年4月からデジタルメディア局医療プレミア編集部。