
5月は職場の転勤、進級、引っ越しなど環境の変化をきっかけに、心の不調が起こりやすい時期。心の不調には漢方薬が効果的ですが、同じ症状を繰り返さないためにはこれまでの生き方を見直すことも重要です。
心の不調は気の巡りをよくして症状を改善
厚生労働省の患者調査によれば、うつ病などの気分障害により心の病気にかかっている人の数は111万6000人(2014年)で、104万1000人(2008年)、95万8000人(2011年、東日本大震災の一部被災地を除く)と、年々、増加傾向にあります。病気とはいかないまでも眠れない、食欲がない、気分が晴れないなどの症状で悩んでいる人の数はさらに多いでしょう。こうした人に効果的なのが漢方薬です。心療内科でもよく使われています。漢方では心の不調は「気・血・水」(連載第2回参照)のうち、気(精神)のバランスが崩れていることが原因と考えます。漢方薬によって気の巡りをよくすることで症状の改善が期待できます。
たとえば半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)や抑肝散(よくかんさん)は、古くから気の巡りをよくする「理気剤(りきざい)」の代表的な薬として知られています。半夏厚朴湯は精神を安定させる作用があり、体力が中程度の人で、不安感が強い人に効果的な薬です。うつ病の症状や不眠の症状にも補助的に使われます。体を温めて全身の代謝をよくする半夏(ハンゲ=サトイモ科のカラスビシャクの球茎の外皮を除いて乾燥したもの)、水…
この記事は有料記事です。
残り1368文字(全文1985文字)
野木病院副院長/筑波大学付属病院臨床教授
かとう・しろう 1982年獨協医科大学卒後、同大第1内科(現心臓・血管内科)入局。88年、同大第1内科大学院卒。第1内科講師、宇都宮東病院副院長などを経て、09年野木病院副院長、筑波大学非常勤講師。同年、筑波大学付属病院総合診療科に漢方外来開設。10年筑波大学付属病院臨床教授。筑波大学付属病院で漢方外来に従事するととともに、主に学生、研修医を対象に漢方の教育活動を行っている。編著に「臨床力をアップする漢方ー西洋医学と東洋医学のW専門医が指南!」(中山書店)。医学博士、日本内科学会認定医、日本呼吸器学会専門医・指導医、日本東洋医学会専門医・指導医、日本老年医学会専門医・指導医など。