人類史からひもとく糖質制限食

糖質制限を阻む甘い誘惑 蜂蜜と砂糖の歴史

江部康二・高雄病院理事長
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 糖尿病の患者さんでも、メタボリックシンドロームの患者さんでも、そしてアトピー性皮膚炎の患者さんでも、老若男女を問わず、甘党はかなりの割合でいますよね。かく言う私も、決して甘党ではないつもりで、日ごろ家人に「甘いものなんか要らないもんね」などと言ってはいるのですが、酔っぱらって帰宅した翌朝には、テーブルの上のチョコレートがきれいさっぱり無くなっていたりしますので(記憶にはないのですが……)、大きなことは言えません。最近は血糖をほぼ上げないエリスリトールチョコレート(注)もあるので大丈夫なのですが(一方で「糖類ゼロ」をうたいながら、マルチトールという血糖をやや上げる甘味料がたっぷり含まれるものもあるので見極めが重要です)。そういうわけで、今回、そして次回はさまざまな甘みのもとについて検討してみます。

 紀元前6000年頃に描かれた、スペイン・アラーニャ洞窟の壁画には、蜂蜜を採集する人の姿が残っています。この絵が示すように、人類が初めて口にした甘味は、天然の蜂蜜と言われています。ちなみに蜂蜜に含まれる糖質は、果糖(約40%)、ブドウ糖(約35%)、ショ糖(スクロース、数%)です。蜂が集めてきた花の蜜は主にショ糖なのですが、働き蜂の唾液腺から分泌される転化酵素の働きによってブドウ糖及び果糖へと変化し、同時に水分が約20%にまで濃縮されます。

 果糖は血糖値をほとんど上げない糖質なのですが、中性脂肪に変わりやすい性質があるため、蜂蜜は太りやすい甘味料です。一方で、ビタミンやミネラルの含有量が多く、その中には18種を超える有機酸が含まれていてpH値は3.2~4.9、つまり酸性を示します。しかし蜂蜜はカルシウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウムなどの体内に吸収されるとアルカリ性を示すミネラルが豊富なので、アルカリ性食品に分類されます。ちな…

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江部康二

高雄病院理事長

えべ・こうじ 1950年生まれ。京都大学医学部卒業。京都大学胸部疾患研究所(現京都大学大学院医学研究科呼吸器内科学)などを経て、78年より医局長として一般財団法人高雄病院(京都市)に勤務。2000年理事長に就任。内科医、漢方医。糖尿病治療の研究に取り組み、「糖質制限食」の体系を確立したパイオニア。自身も02年に糖尿病であることが発覚し、実践して糖尿病と肥満を克服する。これまで高雄病院などで3000人を超える症例を通じて、糖尿病や肥満、生活習慣病、アレルギーなどに対する糖質制限食の画期的な治療効果を証明し、数々のベストセラーを上梓している。