病気を知る髪の健康相談室

円形脱毛症治療 岐路で活用ウイッグと患者会

齊藤典充 / 横浜労災病院皮膚科部長

意外に知られていない円形脱毛症の真実【6】

 脱毛がよくなっても再発を繰り返す。治療を続けているのになかなか回復しない--。治療が長期間になると、そのまま治療を続けるのか、それともやめてしまったほうがよいのか、岐路が表れます。円形脱毛症は、病院で治療するだけがすべてではありません。治療以外に、自分のためにできることがあります。先が見えなくなって不安に陥りそうな時ほど、変化した外見と心を支える積極的なケアが大切です。

多様に進化しているウイッグ

 かつらをつけることは、恥ずかしいこと。そう思っていませんか。「かつら」という言葉には、お笑いのネタにされて笑われたり、陰でうわさされたりする負のイメージがあり、どうしても抵抗を感じてしまう人が少なくありません。でも、おしゃれのための「ウイッグ」ならば、悪いイメージはあまり持たれません。ウイッグはかつらを英語で言っているだけで、本質的には同じものです。脱毛をウイッグでカバーして、人前に出ても支障がないなら、ウイッグは活用した方がいいものだと思います。

 最近のウイッグは、つける人に配慮して機能などが進化し、種類が多様化しています。毛髪全体をカバーするフルウイッグ以外にも、脱毛部にヘアピースのように取り付けるタイプ、装着や取り外しが簡単にできる粘着テープ付きのつけ毛、自毛となじませて自然に見えるように工夫されたものなどがあります。

 医療用ウイッグには明確な品質基準がありませんでしたが、2015年4月20日に日本工業規格(JIS)が制定され、品質や安全性が確かめられた製品が使用できるようになりました。医療用ウイッグは病気で失われた患者の容姿整容性を改善して、生活の質を高めることを目的としたものです。子ども用の医療ウイッグもあります。

まずは、おしゃれや気分転換に試してみる

 一般的にウイッグは高価なものですが、価格は1万円前後からあり、レンタルで利用できるものもあります。ウイッグを検討している場合は、購入前に説明を聞きに行ってもらいます。きちんとしたメーカーでは、カウンセリングがあり、いきなり買わされることはありません。また、メーカーによっては、アフターサービスや頭皮のケアまでしてくれます。ただし、費用はそれなりにかかります。購入後の費用も事前に聞いた方がいいでしょう。このように選択肢の幅が広くなっているので、すぐにオーダーメードのウイッグを購入しなくても、おしゃれや気分転換として気軽につけられるものから試してみてはいかがでしょうか。ウイッグをつけることは、治療を諦めることではありません。病気によって変化した容姿整容性を回復させて、自分らしく生きるための助けとなるものです。

患者会は悩みを共有し、仲間づくりの場

 円形脱毛症の治療をいつまで続けるのか。これには、決まりがありません。なかなか改善しない場合、自らの意思で治療をやめると決心する患者さんもいます。毛髪が広範囲に抜けて回復が難しい男性では、ウイッグをつけるより「スキンヘッドにしたいので、そってもいいですか」と質問されることもあります。最近は、スキンヘッドにしても人の目が気にならないという男性がいて、治療はもういいと言うのです。どのように選択するかは、患者さんそれぞれです。

 岐路に立って、悩みや不安で心が折れそうになった時、同じ病気を経験している仲間の存在は、心の支えになります。円形脱毛症の患者会には、脱毛歴の長い患者さんがいて、ウイッグのことや日常生活についてよく知っています。円形脱毛症には、人に言えないデリケートな心の悩みが伴います。女性の患者さんの中には、一緒に暮らす家族や夫にさえ円形脱毛症を隠している方がいます。しかし、つらい気持ちは、吐き出さないと楽にはなりません。信頼できる人には、打ち明けて味方になってもらいましょう。患者会はそのための仲間づくりの場です。ぜひ、活用しましょう。もし、患者会の情報がない場合は、かかりつけの皮膚科医に紹介してもらうことをお勧めします。

病気だけにとらわれない人生を送ろう

 円形脱毛症の連載では、病気の原因がストレスとは限らないと、たびたび言ってきました。あのストレスがいけなかったと思い続けていると、病気だけにとらわれた人生になってしまいます。ですから犯人捜しはほどほどにして、自分が楽しいと思うことを存分にしてほしいと思います。ウイッグや患者会は、それを手助けしてくれるものです。【聞き手=医療ライター・阿部厚香】

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齊藤典充

齊藤典充

横浜労災病院皮膚科部長

さいとう・のりみつ 1993年北里大学卒業、同大学皮膚科に入局。98~2000年米国カリフォルニア大学サンディエゴ校留学。国立横浜病院(現:国立病院機構横浜医療センター)皮膚科、北里大学皮膚科助手、講師、国立病院機構横浜医療センター皮膚科部長などを経て14年4月から現職。専門は脱毛症、血管炎、血行障害。日本皮膚科学会の脱毛症に関する診療ガイドラインの作成に携わるなど、長年、診療の第一線で脱毛治療・研究の分野をリードしている。

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