医療プレミア特集

6回の心臓手術を乗り越え なお直面する課題

鈴木敬子・毎日新聞 医療プレミア編集部
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 生まれつき心臓に何らかの異常を持つ先天性心疾患。日本では新生児の約100人に1人の割合で発症し、年間約1万人の赤ちゃんが先天的な心臓の病気を持って生まれてくるといわれている。かつては幼くして亡くなるケースが多く、現在でも乳児期死亡の主要な原因となっているが、医療技術の進歩によって患者の生存率は飛躍的に向上してきた。一方、術後も長期にわたってケアが必要で、運動の制限や、酸素ボンベの携帯が必要になるなど、さまざまな困難を抱えながら社会生活を送るケースも多い。そうした中でも病気と向き合いながら、前向きに課題を克服しようとする患者とその家族、それを支える保育関係者や医療者たちの姿を紹介する。初回は6回の手術を経験した患者とその家族が直面してきた現実と課題を伝える。

 「赤ちゃんに黄だんと感染症があるようです。詳しく検査しましょう」。2012年7月、次女の希実ちゃん(4)を出産した赤荻聡子さん(36)=横浜市=は、産院の医師から思いも寄らない言葉をかけられた。出産翌日の新生児健診後のことだ。赤荻さんが状況をのみこめないまま、希実ちゃんは神奈川県内の別の病院に救急搬送され、さらに神奈川県立こども医療センター(横浜市南区)に転院。そこで、先天性心疾患の中でも重症の「左心低形成症候群」と診断された。

 左心低形成症候群は、四つある心臓の部屋のうち、全身に血液を送り出す役割を担う左心室が生まれつき小さいほか、全身から戻った血液が流れ込む右心房と肺から戻った血液が流れ込む左心房の間に穴が開いている「心房中隔欠損」などを伴う。疾患による症状が見られたらできるだけ早く治療を受けなければ、新生児期を生き延びられないとされる。この病気では、肺から心臓に戻ってきた酸素を多く含む血液が、胎児期に存在する「動脈…

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鈴木敬子

毎日新聞 医療プレミア編集部

すずき・けいこ 1984年茨城県生まれ。法政大卒。2007年毎日新聞社入社。岐阜支局、水戸支局、横浜・川崎支局を経て、15年5月からデジタルメディア局。