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たばこは老化も促進する

和田裕雄・順天堂大学准教授
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 私が禁煙を勧める理由として、これまでは肺がん発症の危険性を例に話を進めてきました。しかし、たばこが関連する病気は肺がんだけではありません。米疾病対策センター(CDC)は、全身のさまざまな病気がたばこによって引き起こされるとしています(図1)。その中から、今回は慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)についてお話しします。

 COPDは主にたばこの煙を吸うことによって起こる呼吸器の炎症の病気で、喫煙者の15~20%が発症するといわれています。たばこを吸うと、口と肺とを結ぶ空気の通り道(気道)に煙が入り込むため、異物排除の炎症反応が起こります。この連載の「『肺がんとたばこって関係あんの?』への回答」で「1日の喫煙本数×喫煙年数」で表される「ブリンクマン指数」の説明をしましたが、これが400を超えるくらいになると「慢性炎症」の状態になります。気道が狭くなり、せきやたん、息切れなどの症状が目立つようになります。また、COPD患者の肺には、気腫と呼ばれる穴が開くことがあり「肺気腫症」と呼ばれます。たばこによる慢性炎症の結果、肺の構造が溶けて穴が開いてしまった状態と考えていいでしょう。肺は、酸素を血中に送り、血中の二酸化炭素を体外へ出します。ところが、COPDが重症化すると十分な酸素を血中に取り込めなくなります。大気中に21%しかない酸素では十分でなく、体が低酸素状態に陥ってしまいます。

 狭くなった気道の治療は、気管支拡張薬を用います。微細な粉の薬を吸入する「吸入薬」が主流で、炎症を抑える薬も併用することがあります。重症のCOPDでは、在宅時も外出時も酸素ボンベを携行しなくてはならず(在宅酸素療法)、生活にさまざまな制限を受けます。

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和田裕雄

順天堂大学准教授

わだ・ひろお 1993年、東京大学医学部卒。東京大学医学部付属病院、東京大学医科学研究所、英国Imperial College London留学、杏林大学付属病院呼吸器内科学教室などで、特に閉塞性肺疾患、慢性呼吸不全などの呼吸器疾患に焦点を当てて診療・研究・教育に携わってきた。2014年より順天堂大学公衆衛生学講座准教授として、予防医学や産業医学の分野で地域や働く人たちの健康管理にも目を配っている。医学博士、内科学会専門医、呼吸器学会専門医、老年医学会専門医。