無難に生きる方法論

平和だから悩む「早漏問題」

石蔵文信・大阪大学招へい教授
  • 文字
  • 印刷

 前回は自転車と勃起不全(ED)の関係について説明した。勃起障害についてはよく耳にするが、射精障害で悩んでいる男性も実は少なくない。勃起障害はバイアグラなどの画期的な薬の登場でかなり解決できるようになった。しかし、射精障害は対応の方法が少ないので、悩みとしてはより深刻かもしれない。射精障害には早すぎる「早漏」と遅すぎる「遅漏」がある。

 特に早漏は男性にとってはあまり誇らしいことではないだろう。しかし、生物学的にはとっても良いことなのだ。生物にとっては、睡眠、脱皮中などと並んで交尾は生命の危険のある行為である。しっかり寝ていたのでは肉食動物に襲われる危険のある草食動物の睡眠サイクルは極めて短く、頻繁に目を覚ましている。交尾中も無防備なので捕食者から狙われやすい。そのため、交尾をさっさと済ませることが必要で、多くの動物のオスは早漏である。つまり、早漏は男性が敵から身を守るために備わった防衛本能である。ところがいつの頃からか、人間は捕食者から身を守る必要がなくなった。そのため睡眠周期も長くなり、性行為に時間をかけることができるようになったので、あまりにも早い射精にパートナーが不満を感じるようになったのだろう。

 一般に早漏は「病気」と認識されていないが、2007年に国際性医学会議の主導で検討が始まり、翌年の米国泌尿器科学会で発表された定義が一般的に使われている。その定義とは「ほとんどいつも膣(ちつ)内挿入前または挿入1分以内に射精が起きて、それを遅らせることができずにストレスになっている状態」となっている。余談だが小学館がかつて発行していた雑誌「sabra」(10年に休刊)のアンケートによると、女性は「…

この記事は有料記事です。

残り709文字(全文1418文字)

石蔵文信

大阪大学招へい教授

いしくら・ふみのぶ 1955年京都生まれ。三重大学医学部卒業後、国立循環器病センター医師、大阪厚生年金病院内科医長、大阪警察病院循環器科医長、米国メイヨー・クリニック・リサーチフェロー、大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻准教授などを経て、2013年4月から17年3月まで大阪樟蔭女子大学教授、17年4月から大阪大学人間科学研究科未来共創センター招へい教授。循環器内科が専門だが、早くから心療内科の領域も手がけ、特に中高年のメンタルケア、うつ病治療に積極的に取り組む。01年には全国でも先駆けとなる「男性更年期外来」を大阪市内で開設、性機能障害の治療も専門的に行う(眼科イシクラクリニック)。夫の言動への不平や不満がストレスとなって妻の体に不調が生じる状態を「夫源病」と命名し、話題を呼ぶ。また60歳を過ぎて初めて包丁を持つ男性のための「男のええ加減料理」の提唱、自転車をこいで発電しエネルギー源とする可能性を探る「日本原始力発電所協会」の設立など、ジャンルを超えたユニークな活動で知られる。「妻の病気の9割は夫がつくる」「なぜ妻は、夫のやることなすこと気に食わないのか エイリアン妻と共生するための15の戦略」など著書多数。