実践!感染症講義 -命を救う5分の知識-

日米でこんなに違う 膀胱炎の治療方針

谷口恭・太融寺町谷口医院院長
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 数年前から「choosing wisely」という概念が世界中の医師の間で注目されています。残念ながら日本ではあまり浸透していませんが、我々医師にも行政にも、そしてもちろん患者さんにとっても「有益」なものです。choosing wiselyを一言で説明するとすれば「ムダな医療」をなくす、となります(注1)。具体的な「ムダな医療」の“あぶり出し”を行うために、米国のいくつかの学会が「五つの例」を挙げています。

 その一つとして、米国泌尿器学会(American Urological Association)は2017年5月13日、「ムダな医療」を施さないための五つの提言をしました(注2)。その五つのうちのひとつが「合併症のない女性の膀胱(ぼうこう)炎に、安易にニューキノロン系抗菌薬(以下『ニューキノロン』」)を使ってはいけない」です。

 ここでいう「合併症」とは、例えば重症の糖尿病やHIV感染、悪性腫瘍といった、特に免疫系に異常が起こりやすい疾患のことです。こういった疾患がなく健康な女性の場合、膀胱炎にはニューキノロンでなく、もっと適切なものを使いなさい、ということです。

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谷口恭

太融寺町谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。太融寺町谷口医院ウェブサイト