2017年のノーベル医学生理学賞が10月2日に発表され、体内時計研究者であるジェフリー・ホール、マイケル・ロスバシュ、マイケル・ヤングの3氏が受賞決定者に選ばれました。今回は、ノーベル賞受賞が決まった体内時計研究を、一般の方にも分かりやすく説明したいと思います。また、同じく体内時計研究者である筆者2人から、今回の受賞決定について、喜びと今後の研究に向けた熱い思いをお伝えします。

 体内時計研究の歴史は古く、その始まりは1700年代にさかのぼります。特に、1729年にフランスの天文学者ドゥ・メランが、ミモザの葉が昼間に開き、夜に閉じる現象を調べて報告したことがよく引用されます(図1)。ドゥ・メランは、この昼夜の変化が、一日中暗い箱の中に入れても継続することを初めて示しました。つまり、ミモザの葉が昼間に開くのは太陽光の影響によると考えられていたものが、太陽がなくても昼間には葉が開き、夜には閉じたのです。ドゥ・メランはこの時「ミモザは何らかの方法で太陽の動きを感じている」、つまり外部に原因があると考え、体内時計の存在には気付きませんでした。

 その後200年たち、植物生理学者のエルビン・ビュニングらが、これらのリズム現象が体内に存在する体内時計によるものだと考えました。つまり、太陽という環境時計がなくても、ミモザは自身の体内時計に従い、そろそろ昼だと思って葉を開かせていたのです。同様の研究はその後ヒトでも行われ、1960年代に生理学者ユルゲン・アショフらにより、時計のない薄暗い部屋にヒトを隔離しても、約24時間のリズム性を持って行動す…

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柴田重信

早稲田大学教授

しばた・しげのぶ 1953年生まれ。九州大学薬学部卒業、薬学研究科博士修了。九州大学助手・助教授、早稲田大学人間科学部教授などを経て、2003年より早稲田大学理工学術院教授。薬学博士。日本時間生物学会理事、時間栄養科学研究会代表。時間軸の健康科学によって健康寿命を延ばす研究に取り組む。専門は時間栄養学、時間運動学とその双方の相乗効果を健康に活かす商品・プログラム開発。田原助教との共著に「Q&Aですらすらわかる体内時計健康法-時間栄養学・時間運動学・時間睡眠学から解く健康-」(杏林書院)。

田原優

カリフォルニア大学ロサンゼルス校助教

たはら・ゆう 1985年生まれ。早稲田大学理工学部、同大学大学院先進理工学専攻卒業。博士(理学)。早稲田大学助手を経て、2015年より早稲田大学高等研究所助教、17年1月よりカリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部助教。07年より、柴田重信教授と共に、時間栄養学研究の確立に取り組んできた。また、発光イメージングによるマウス体内時計測定、ストレスによる体内時計調節などの成果も発表している。常にヒトへの応用を意識しながら、最先端の基礎研究を行っている。柴田教授との共著に「Q&Aですらすらわかる体内時計健康法-時間栄養学・時間運動学・時間睡眠学から解く健康-」(杏林書院)。