医をめぐる情景

患者の声に健常者が合わせてこそ合唱できる

上田諭・東京医療学院大学教授
  • 文字
  • 印刷
「こらーる岡山」に密着したドキュメンタリー映画「精神」の1シーン
「こらーる岡山」に密着したドキュメンタリー映画「精神」の1シーン

ドキュメンタリー映画「精神」(2008年)

 精神科病院の病棟にはいまも、中からは開けられない鍵が常時かけられた病棟がある。それは、閉鎖病棟と呼ばれる。精神的な不調から、自分の身体や生命を守れず、またまれには他人を傷つけてしまう可能性 のある人たちの治療を安全に進めるため、法律で認められた「強制的入院」を主に行う病棟である。患者の自由な行動は制限され、精神科医師の許可がなければ外へ出たくても出ることはできない。

 50年近く前、鍵をかける病棟に疑問を抱いた若い精神科医がいた。医師は、行動に問題の多い患者が集まる…

この記事は有料記事です。

残り1779文字(全文2035文字)

上田諭

東京医療学院大学教授

うえだ・さとし 京都府生まれ。関西学院大学社会学部では福祉専攻で精神医学のゼミで学ぶ。卒後、朝日新聞に記者で入社したが、途中から内勤の編集部門に移され「うつうつとした」日々。「人生このままでは終われない」と、もともと胸にくすぶっていた医学への志向から1990年、9年勤めた新聞社を退社し北海道大学医学部に入学(一般入試による選抜)。96年に卒業、東京医科歯科大学精神神経科の研修医に。以後、都立の高齢者専門病院を中心に勤務し、「適切でない高齢者医療」の現状を目の当たりにする。2007年、高齢者のうつ病治療に欠かせない電気けいれん療法の手法を学ぶため、米国デューク大学メディカルセンターで研修し修了。同年から日本医科大学(東京都文京区)精神神経科助教、11年から講師、17年4月より東京医療学院大学保健医療学部教授。北辰病院(埼玉県越谷市)では、「高齢者専門外来」を行っている。著書に、「治さなくてよい認知症」(日本評論社、2014)、「不幸な認知症 幸せな認知症」(マガジンハウス、2014)、訳書に「精神病性うつ病―病態の見立てと治療」(星和書店、2013)、「パルス波ECTハンドブック」(医学書院、2012)など。