女性泌尿器科医が語る サイエンス&スポーツ

おしっこが漏れそうになる「過活動膀胱」とは

奥井識仁・よこすか女性泌尿器科・泌尿器科クリニック院長
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 突然尿意を感じて我慢できない(尿意切迫感)、トイレに間に合わず尿を漏らしてしまう(切迫性尿失禁)、昼間に何度もトイレにいく(頻尿)、夜間の排尿の回数が多い(夜間頻尿)。これらは「過活動膀胱(ぼうこう)」の症状です。英語では、Over Active Bladder Syndrome(OAB)といいます。最も特徴的な症状は尿意切迫感です。日本人の有病率は40歳以上の方の8人に1人で、国内に810万人の患者がいるといわれています。今、この過活動膀胱にさまざまな治療が試みられています。

 膀胱に尿をためている時は交感神経が活発化しています。その働きで膀胱の壁の筋肉(平滑筋)が緩み、さらにたくさんの尿をためられるようになっているのです。トイレに行って排尿できる状態になると、副交感神経が活発化してアセチルコリンという神経伝達物質が放出されます。アセチルコリンが膀胱にあるムスカリン受容体というスイッチに結合すると、膀胱の壁の筋肉が収縮して排尿が行われます。

 過活動膀胱の治療に使われる抗コリン薬は、アセチルコリンとムスカリン受容体の結合を邪魔すること(抗コリン作用)で、尿をためている段階(蓄尿期)に膀胱が過剰な収縮をしてしまうのを抑えます。この医学的作用から、抗ムスカリン薬またはムスカリン受容体拮抗(きっこう)薬という名前も使われます。

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奥井識仁

よこすか女性泌尿器科・泌尿器科クリニック院長

おくい・ひさひと 1999年東京大学大学院修了(医学博士)後、渡米し、ハーバード大学ブリガム&ウイメンズ病院にて、女性泌尿器科の手術を習得する。女性泌尿器科とは、英語でUrogynecology。“Uro”は泌尿器科、“Gynecology”は婦人科を意味し、“Urogynecology”で、両科の中間にあたる部門という意味がある。都内の複数の大学病院から専門領域の診療に関する相談を受けながら、「よこすか女性泌尿器科・泌尿器科クリニック」を運営し、年間約800件の日帰り手術を行っている。水泳、マラソン、トライアスロンなどのスポーツ、音楽(サックス演奏)が趣味で、さまざまなスポーツ大会にドクターとして参加している。著書に「人生を変える15分早歩き」「ドクター奥井と走るランニングのススメ」(いずれもベースボールマガジン社)など。