医をめぐる情景

「男たちの旅路」が問うた老いへの敬意

上田諭・東京医療学院大学教授
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高齢者が生き生きと暮らす街として知られる東京・巣鴨
高齢者が生き生きと暮らす街として知られる東京・巣鴨

NHKドラマ「男たちの旅路 シルバー・シート」(1977年)

 高齢者は、若いころに比べれば弱くもろい。活動は緩慢になり、思考力も能率が低下する。それは誰にも訪れる加齢の現象である。しかし当然だが、高齢者はもとから高齢者だったわけではない。

 若年から長い間の会社勤めをし、または自営で店を切り盛りしていた。あるいは家事を一手に引き受け、また育児をこなしていた。さらには、書や舞踊や三味線にたけ、弟子を育てたかもしれない。スポーツの仲間と競技会で活躍していた人もいただろう。高齢者はそれら長い間の道のりを背負って、高齢者になったのである。

 人は高齢者を見たとき、そのことをなかなか思い起こせない。動作が鈍く、認知能力が心配な年老いた人だ、…

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上田諭

東京医療学院大学教授

うえだ・さとし 京都府生まれ。関西学院大学社会学部では福祉専攻で精神医学のゼミで学ぶ。卒後、朝日新聞に記者で入社したが、途中から内勤の編集部門に移され「うつうつとした」日々。「人生このままでは終われない」と、もともと胸にくすぶっていた医学への志向から1990年、9年勤めた新聞社を退社し北海道大学医学部に入学(一般入試による選抜)。96年に卒業、東京医科歯科大学精神神経科の研修医に。以後、都立の高齢者専門病院を中心に勤務し、「適切でない高齢者医療」の現状を目の当たりにする。2007年、高齢者のうつ病治療に欠かせない電気けいれん療法の手法を学ぶため、米国デューク大学メディカルセンターで研修し修了。同年から日本医科大学(東京都文京区)精神神経科助教、11年から講師、17年4月より東京医療学院大学保健医療学部教授。北辰病院(埼玉県越谷市)では、「高齢者専門外来」を行っている。著書に、「治さなくてよい認知症」(日本評論社、2014)、「不幸な認知症 幸せな認知症」(マガジンハウス、2014)、訳書に「精神病性うつ病―病態の見立てと治療」(星和書店、2013)、「パルス波ECTハンドブック」(医学書院、2012)など。