
先日、私が在宅診療をしていた認知症患者さんの娘さんが訪ねてきました。実家は、認知症のお父さんをお母さんが自宅で介護する「老老介護」でした。お母さんが著しい介護疲れに陥ってしまったため、娘さんがケアマネジャーと相談して、お父さんを施設に入所させたばかりでした。
ところが入所後、お父さんの認知症はわずか1カ月で一気に進行し、呼びかけに対する反応も薄弱になりました。娘さんは憔悴(しょうすい)しきった様子で「本当にこの選択で良かったのでしょうか……」と相談にいらっしゃったのです。
このように認知症は、転居に伴って症状が悪化するケースが少なくありません。こうした転居による病状悪化は「リロケーションダメージ」と呼ばれています。
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くどうちあき脳神経外科クリニック院長
くどう・ちあき 1958年長野県下諏訪町生まれ。英国バーミンガム大学、労働福祉事業団東京労災病院脳神経外科、鹿児島市立病院脳疾患救命救急センターなどで脳神経外科を学ぶ。89年、東京労災病院脳神経外科に勤務。同科副部長を務める。01年、東京都大田区に「くどうちあき脳神経外科クリニック」を開院。脳神経外科専門医であるとともに、認知症、高次脳機能障害、パーキンソン病、痛みの治療に情熱を傾け、心に迫る医療を施すことを信条とする。 漢方薬処方にも精通し、日本アロマセラピー学会認定医でもある。著書に「エビデンスに基づく認知症 補完療法へのアプローチ」(ぱーそん書房)、「サプリが命を躍動させるとき あきらめない!その頭痛とかくれ貧血」(文芸社)、「脳神経外科医が教える病気にならない神経クリーニング」(サンマーク出版)など。
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