生命の時計から考える健康生活

体内時計を制御する新たな花粉症治療の可能性

柴田重信・早稲田大学教授田原優・カリフォルニア大学ロサンゼルス校助教
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 前回は、花粉症などのI型アレルギー反応(マスト細胞とIgEによって引き起こされるアレルギー)で見られる夜から朝の症状悪化に、体内時計、特にマスト細胞の時計が深く関与していることをお話ししました。体内時計によって症状が悪化する時間帯が決まっている……ということは逆に考えると、症状が抑制される時間帯(昼から夕方にかけて)も決まっているということになります。今回は、体内時計の針を人為的に動かすことでI型アレルギー反応の症状悪化を防ぐことができるかという研究について、前回に引き続き山梨大学免疫学講座の中村勇規講師にお話をうかがいながら紹介したいと思います。

 哺乳類の体内時計は、主にクロック(Clock)、ビーマル1(Bmal1)、ピリオド2(Period2)、クリプトクロム(Cryptochrome)--という四つの時計遺伝子によって合成される時計たんぱく質によって構成されています。中村先生たちはこのピリオド2遺伝子の情報に基づいて作られるたんぱく質(ピリオド2たんぱく質)の合成量とI型アレルギー反応との関係に注目し、研究を行いました。

 実験のために、ピリオド2たんぱく質が合成されると発光が観察できるよう操作したマスト細胞をマウスの皮膚に移植し、マスト細胞で合成されたピリオド2たんぱく質の量だけが観察できるマウスを作製。このマウスを使い、1日のうち複数の時間帯でマスト細胞におけるピリオド2たんぱく質量を観察しました。

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柴田重信

早稲田大学教授

しばた・しげのぶ 1953年生まれ。九州大学薬学部卒業、薬学研究科博士修了。九州大学助手・助教授、早稲田大学人間科学部教授などを経て、2003年より早稲田大学理工学術院教授。薬学博士。日本時間生物学会理事、時間栄養科学研究会代表。時間軸の健康科学によって健康寿命を延ばす研究に取り組む。専門は時間栄養学、時間運動学とその双方の相乗効果を健康に活かす商品・プログラム開発。田原助教との共著に「Q&Aですらすらわかる体内時計健康法-時間栄養学・時間運動学・時間睡眠学から解く健康-」(杏林書院)。

田原優

カリフォルニア大学ロサンゼルス校助教

たはら・ゆう 1985年生まれ。早稲田大学理工学部、同大学大学院先進理工学専攻卒業。博士(理学)。早稲田大学助手を経て、2015年より早稲田大学高等研究所助教、17年1月よりカリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部助教。07年より、柴田重信教授と共に、時間栄養学研究の確立に取り組んできた。また、発光イメージングによるマウス体内時計測定、ストレスによる体内時計調節などの成果も発表している。常にヒトへの応用を意識しながら、最先端の基礎研究を行っている。柴田教授との共著に「Q&Aですらすらわかる体内時計健康法-時間栄養学・時間運動学・時間睡眠学から解く健康-」(杏林書院)。