生命の時計から考える健康生活

花粉症の「アレルゲン免疫療法」は夜が効果的

柴田重信・早稲田大学教授田原優・カリフォルニア大学ロサンゼルス校助教
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 福岡市など早いところでは2月下旬からスギ花粉の飛散がピークを迎えそうです。すでに飛散が始まっている地域もあり、鼻水やくしゃみで毎日イライラしている花粉症の方もいると思います。今回は、花粉症に対して唯一、長期にわたって症状が出なくなる「寛解」を目指す「アレルゲン免疫療法」と体内時計についてご紹介したいと思います。これまでの研究で、この療法は夜、寝ている間に行う方が効果が高いことが分かっています。それはなぜでしょうか。前回、前々回に引き続き、山梨大学免疫学講座の中村勇規講師にお話をうかがいながら紹介したいと思います。

 「アレルゲン」とは、アレルギーを起こさせるたんぱく質です。アレルギー性鼻炎(花粉症)やぜんそくに代表されるアレルギー疾患に対して、アレルゲンを皮膚や舌の下などに直接投与し、免疫寛容(アレルゲンに反応しなくなる状態)を引き起こさせることを目標とした治療法がアレルゲン免疫療法です。では、花粉症を持つ方に花粉を摂取させることがなぜ治療になるのでしょうか? 完全には明らかになっていませんが、現在までの研究で明らかとなっているメカニズムの説明から順を追って、体内時計との関係についても解説していきます。

 今から100年以上前の1911年、イネ科の花粉症患者に対し、皮下に少量のアレルゲンを注射(皮下免疫療法)すると症状が緩和される効果があることが、医学誌「Lancet」に初めて報告されました。しかし、この皮下免疫療法は、激しいアレルギー反応が引き起こされる「アナフィラキシーショック」などの副作用の可能性があるなどの理由から、日本では限られた施設で医師立ち会いのもとで行われているのが現状です。そうした中で、近年では、舌の下にアレルゲンを投与する「舌下免疫療法」が注目を集めています。この方法は、副作用が穏やかで局所にとどまり、自宅での使用が可能です。

 欧州ではすでに舌下免疫療法がアレルギー性鼻炎の標準的治療法の一つになっており、そのための薬が多く存在しています。日本では2014年に舌下免疫療法用のスギ花粉アレルゲンエキスが初めて発売されました。現在ではより簡便に使用でき、より高い治療効果が期待できるとされる錠剤も承認されています。

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柴田重信

早稲田大学教授

しばた・しげのぶ 1953年生まれ。九州大学薬学部卒業、薬学研究科博士修了。九州大学助手・助教授、早稲田大学人間科学部教授などを経て、2003年より早稲田大学理工学術院教授。薬学博士。日本時間生物学会理事、時間栄養科学研究会代表。時間軸の健康科学によって健康寿命を延ばす研究に取り組む。専門は時間栄養学、時間運動学とその双方の相乗効果を健康に活かす商品・プログラム開発。田原助教との共著に「Q&Aですらすらわかる体内時計健康法-時間栄養学・時間運動学・時間睡眠学から解く健康-」(杏林書院)。

田原優

カリフォルニア大学ロサンゼルス校助教

たはら・ゆう 1985年生まれ。早稲田大学理工学部、同大学大学院先進理工学専攻卒業。博士(理学)。早稲田大学助手を経て、2015年より早稲田大学高等研究所助教、17年1月よりカリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部助教。07年より、柴田重信教授と共に、時間栄養学研究の確立に取り組んできた。また、発光イメージングによるマウス体内時計測定、ストレスによる体内時計調節などの成果も発表している。常にヒトへの応用を意識しながら、最先端の基礎研究を行っている。柴田教授との共著に「Q&Aですらすらわかる体内時計健康法-時間栄養学・時間運動学・時間睡眠学から解く健康-」(杏林書院)。