
今回は救急の現場での医師の判断や考えを追体験できるよう、モデルケースに沿ってお話をしたいと思います。テーマは「胸の痛み」です。
忙しい冬の救急外来に1人の患者さんが来院しました。患者さんの基本データは以下の通りです。
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鈴木次郎さん:65歳男性。会社員
病院に来た理由:胸の痛み。2月の朝に食後ゆっくりしていたところ胸が痛くなってきた。休んでいても改善しないため、かかりつけのクリニックを受診して、心電図と胸のX線写真をとってもらったが、原因が分からずいったん帰宅。翌日の朝になっても痛みが改善しないため救急外来を受診した
現在の病気:高血圧にて薬を飲んでいる。手術をうけたことはない。他の病気はない
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国際医療福祉大医学部救急医学主任教授(同大成田病院救急科部長)
しが・たかし 1975年、埼玉県生まれ。2001年、千葉大学医学部卒業。学生時代より総合診療・救急を志し、米国メイヨー・クリニックでの救急研修を経てハーバード大学マサチューセッツ総合病院で指導医を務めた救急医療のスペシャリスト。東京ベイ・浦安市川医療センター救急科部長などを経て20年6月から国際医療福祉大学医学部救急医学教授、21年4月から主任教授(同大成田病院救急科部長)。安全な救急医療体制の構築、国際競争力を産み出す人材育成、ヘルスリテラシーの向上を重視し、日々活動している。「考えるER」(シービーアール、共著)、「実践 シミュレーション教育」(メディカルサイエンスインターナショナル、監修・共著)、「医師人生は初期研修で決まる!って知ってた?」(メディカルサイエンス)など、救急や医学教育関連の著書・論文多数。