Dr.林のこころと脳と病と健康

薬物依存…脳にできる「やめられなくなる回路」

林公一・精神科医
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絵=画家・絵師 OZ-尾頭-山口佳祐(http://oz-te.com)
絵=画家・絵師 OZ-尾頭-山口佳祐(http://oz-te.com)

 さわやかなほほ笑みを浮かべて近づいてくる。

 幸福をもたらしてくれる期待がある。

 一抹の不安はある。

 でも少しくらいなら試してみるか、と思って受け入れる。

 そこからは坂を転げるように破滅に向かう。

 --これは詐欺被害の典型的なパターン……ではなくて、昔から繰り返されてきた薬物依存のごく一般的な自然経過です。

 たとえば日本の覚醒剤の歴史を振り返ってみましょう。

 覚醒剤は、はじめは合法でした。薬局で普通に売られていて、自由に買うことができました。商品名は「ヒロポン」。「疲労をポンと取る」、つまり疲労回復の妙薬として売られていたのです。日本社会にいかに浸透していたかは、国民的4コマ漫画「サザエさん」の昔の作品にも表れています。仕事に集中するために買ってあったヒロポンを、子どもが間違って飲んでしまい、陽気に騒いでいるのを、ほほえましい姿として大人たちが見てい…

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林公一

精神科医

はやし・きみかず 精神科医、医学博士。著書に「統合失調症という事実」「擬態うつ病/新型うつ病」「名作マンガで精神医学」「虚言癖、嘘つきは病気か」など。ウェブサイト「Dr.林のこころと脳の相談室」は、読者からの質問に林医師が事実を回答するもので、明るい事実・暗い事実・希望の持てる事実・希望の持てない事実を問わず、直截に回答するスタイルを、約20年にわたり継続中。