旅と病の歴史地図

渡航前のワクチン接種が命を救う

濱田篤郎・東京医科大学教授
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 今年に入ってからブラジル南東部で黄熱(黄熱病)の流行が拡大しています。ブラジルでは以前からアマゾン川流域などで黄熱が流行していましたが、今回はサンパウロやリオデジャネイロなどの大都市近郊でも多くの患者が発生しているのです。患者の中にはヨーロッパや近隣の南米諸国からの旅行者も含まれています。

 黄熱は蚊が媒介するウイルス感染症です。1928年に野口英世が、西アフリカでこの病気の研究中、自らが感染して命を落としたことでご存じの方も多いと思います。今でもアフリカや南米の赤道周辺で流行が続いており、3人に1人が死亡するという恐ろしい病気です。

 今回のブラジルでの流行を受けて、世界保健機関(WHO)は都市部に滞在する旅行者にも黄熱ワクチンの接種を強く推奨しています。また、近隣の南米諸国の中には、流行が及ぶのを防ぐため、ブラジルからの入国者に黄熱ワクチンの接種証明書提出を求める国も出ています。

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濱田篤郎

東京医科大学教授

はまだ・あつお 1981年、東京慈恵会医科大学卒業。84~86年に米国Case Western Reserve大学に留学し、熱帯感染症学と渡航医学を修得する。帰国後、東京慈恵会医科大学・熱帯医学教室講師を経て、2005年9月~10年3月は労働者健康福祉機構・海外勤務健康管理センター所長代理を務めた。10年7月から東京医科大学教授、東京医科大学病院渡航者医療センター部長に就任。海外勤務者や海外旅行者の診療にあたりながら、国や東京都などの感染症対策事業に携わる。11年8月~16年7月には日本渡航医学会理事長を務めた。著書に「旅と病の三千年史」(文春新書)、「世界一病気に狙われている日本人」(講談社+α新書)、「歴史を変えた旅と病」(講談社+α文庫)、「新疫病流行記」(バジリコ)、「海外健康生活Q&A」(経団連出版)など。19年3月まで「旅と病の歴史地図」を執筆した。