生命の時計から考える健康生活

スペイン人のダイエット事情と体内時計の関係

柴田重信・早稲田大学教授田原優・カリフォルニア大学ロサンゼルス校助教
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 前回は、時差ぼけ中に“肥満菌”が腸内で増えることで太りやすくなることを紹介しました。ゴールデンウイークに海外に行かれる方は、ぜひ旅行中にヨーグルトを取ることで腸内環境を整え、肥満を予防しましょう。さて、今回は、口腔(こうくう)内に生息する細菌について考えてみようと思います。1日5食の生活を送る肥満大国、スペインで行われた研究についても紹介します。不規則な食事は、私たちと共存する細菌のバランスを乱し、ダイエット効果を損ねたり、健康悪化の一因になったりしてしまいます。

 細菌のゲノムを速く安価に解析する技術が登場し、近年の腸内細菌研究は目まぐるしい発展を遂げています(参照:「時差ぼけで太るのは腸内の肥満菌が増えるため」)。そうした研究で分かった、腸内細菌叢(さいきんそう=「腸内フローラ」とも言い、さまざまな種類の腸内細菌の集団を意味する)が昼と夜で変化する、という内容は体内時計研究者の心をつかんだことを前回、報告しました。さらに興味深いことに、昼夜の細菌の変化は、腸内だけではなく、口腔内にいる細菌も同様であることが明らかになりました。

 その研究は、早稲田大学理工学術院先進理工学研究科の服部正平教授の研究室によるもので、男女6人から4時間おきに3日間連続で唾液を採取してもらい解析しています。その結果、どの被験者でも、半数以上の細菌種で、細菌量の昼夜差が見られました。特に、昼間は生育に酸素が必要な好気性の菌が、夜間は生育に酸素を必要としない嫌気性の菌が増えていました。これは、口腔内の酸素量が就寝中に減少することで好気性の菌が減り、…

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柴田重信

早稲田大学教授

しばた・しげのぶ 1953年生まれ。九州大学薬学部卒業、薬学研究科博士修了。九州大学助手・助教授、早稲田大学人間科学部教授などを経て、2003年より早稲田大学理工学術院教授。薬学博士。日本時間生物学会理事、時間栄養科学研究会代表。時間軸の健康科学によって健康寿命を延ばす研究に取り組む。専門は時間栄養学、時間運動学とその双方の相乗効果を健康に活かす商品・プログラム開発。田原助教との共著に「Q&Aですらすらわかる体内時計健康法-時間栄養学・時間運動学・時間睡眠学から解く健康-」(杏林書院)。

田原優

カリフォルニア大学ロサンゼルス校助教

たはら・ゆう 1985年生まれ。早稲田大学理工学部、同大学大学院先進理工学専攻卒業。博士(理学)。早稲田大学助手を経て、2015年より早稲田大学高等研究所助教、17年1月よりカリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部助教。07年より、柴田重信教授と共に、時間栄養学研究の確立に取り組んできた。また、発光イメージングによるマウス体内時計測定、ストレスによる体内時計調節などの成果も発表している。常にヒトへの応用を意識しながら、最先端の基礎研究を行っている。柴田教授との共著に「Q&Aですらすらわかる体内時計健康法-時間栄養学・時間運動学・時間睡眠学から解く健康-」(杏林書院)。