
海外で病気になったり、けがをしたりしたら、どのように病院にかかったらいいでしょうか。渡航を予定している人から、そんな質問をよく受けます。そこで、今回は海外の医療施設の利用方法についてご紹介します。
「武器よさらば」とミラノの病院
海外の病院が舞台になる小説に、アーネスト・ヘミングウェーの「武器よさらば」があります。時は第一次大戦の最中、場所はイタリアのミラノ。主人公のアメリカ人兵士が戦場で足に大けがをし、ミラノの病院に担ぎ込まれます。そこで旧知のイギリス人看護婦と再会し、二人は恋に落ちます。異国での入院生活にもかかわらず、主人公は夢のような日々を過ごすのです。
この小説にでてくる病院は、ヘミングウェー自身が第一次大戦中にけがをして運ばれたミラノの病院がモチーフになっています。アメリカ赤十字社がイタリアに滞在するアメリカ人兵士のために開設した病院で、院内では英語が通用し、自国スタイルそのままの入院生活が送れたのです。
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東京医科大学特任教授
はまだ・あつお 1981年、東京慈恵会医科大学卒業。84~86年に米国Case Western Reserve大学に留学し、熱帯感染症学と渡航医学を修得する。帰国後、東京慈恵会医科大学・熱帯医学教室講師を経て、2005年9月~10年3月は労働者健康福祉機構・海外勤務健康管理センター所長代理を務めた。10年7月から東京医科大学教授、東京医科大学病院渡航者医療センター部長に就任。海外勤務者や海外旅行者の診療にあたりながら、国や東京都などの感染症対策事業に携わる。11年8月~16年7月には日本渡航医学会理事長を務めた。著書に「旅と病の三千年史」(文春新書)、「世界一病気に狙われている日本人」(講談社+α新書)、「歴史を変えた旅と病」(講談社+α文庫)、「新疫病流行記」(バジリコ)、「海外健康生活Q&A」(経団連出版)など。19年3月まで「旅と病の歴史地図」を執筆した。
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