教養としての診断学

「風立ちぬ」で描かれた肺結核は過去の病気?

津村圭・府中病院総合診療センター長
  • 文字
  • 印刷

芸術作品に登場する「結核」という病の描かれ方【1】

 「風立ちぬ」という言葉を聞いて何を思い出すでしょう。松田聖子さんの歌ですか。

 宮崎駿監督のアニメーション映画「風立ちぬ」は、テレビでも放映されたことがあるので、ご覧になられたかたも多いかもしれません。

 もととなったのは堀辰雄の小説「風立ちぬ」で、1938年に刊行されています。小説の冒頭で、突然風が吹いて、節子(主人公の将来の妻)が書いている絵が画架とともに倒れます。その時に、主人公が口の中で繰り返した言葉が「風立ちぬ、いざ生きめやも」で、この小説のタイトルになっています。

 一方アニメでは、主人公である堀越二郎(ゼロ戦の設計者と同じ名前ですが、かなり脚色されています)が将…

この記事は有料記事です。

残り2818文字(全文3132文字)

津村圭

府中病院総合診療センター長

つむら・けい 大阪府出身。1977年大阪市立大学医学部を卒業後、国立循環器病センター(現・国立循環器病研究センター)に心臓内科レジデントとして勤務。その後の28年間は大阪市立大学医学部教員として、学部学生、大学院学生、研修医、指導医、教員の指導と医学部カリキュラムの企画と作成に携わった。診療面では循環器内科をベースとしつつ、早い時期から原因疾患の判別が困難な症例で、診断を担当する総合診療医として従事。研究面では、各種疾病のリスクファクターについての臨床疫学研究を行い、ランセット(Lancet)など欧米医学誌で発表してきた。2014年1月から現職。総合診療医として地域医療に関わるとともに、初期、後期研修医の指導を担当、臨床研修室顧問も兼任する。地域医療を充実させるため院内に家庭医療専門医後期研修プログラムを立ち上げるなど、診療と教育をリンクさせた活動を現在も続けている。府中病院ウェブサイト