Dr.林のこころと脳と病と健康

SNSがうその温床 演技性パーソナリティー障害

林公一・精神科医
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うそつきは病気か【4】

 虚言と関係の深いパーソナリティー障害の一つに、「演技性パーソナリティー障害」があります。名前の通り、「演技」ばかりしているのが特徴です。20歳の女性の例を示しましょう。

奇麗、目立つ、好かれることが最優先

 「私は小さい頃から目立ちたいという欲求が強くて、でも自分の外見は可愛くないことはわかっていたので、勉強をがんばることで目立とうとしていました。そして県内で最も偏差値の高い高校に合格したとき、可愛い自分に変わろうと思ったのです。二重のりでまぶたを二重にし、いつも『明るい子』を演じていました。最初はそれだけで満足していたのですが、あるSNSを始めて、トップ画をあまり有名ではないけど自分が好きなモデルにしたところ、知らない男の人たちから奇麗とか可愛いとか言われました。その画像が私ではなくモデルだと言い出せなくなってしまったことをきっかけに、リアルの生活でも、なりすましのように自分とは違う、奇麗で人気者の演技がエスカレートしました。異性には全くと言っていいほど興味が持てないのですが、ただ奇麗になって異性からちやほやされたいとは強く思います。それはモテて愛し合いたいというのではなく単にモテたいだけ、異性を振り回したいだけのような気がします。実際、異性に触れるのは嫌なのに性的に誘惑したいと思ってしまいます。そのためだけではないのですが、整形を繰り返しています。まぶたを二重にし、鼻に注射、脂肪吸引もしました。でもまだまだ不満で、将来的には全部変えて完璧な美を追求したいです。普通の生活はいらない、奇麗でいられないなら死んだほうがマシです。今の見た目に満足していないのでストレスがすごくてつらいです。でも家族や友達にはそんなそぶりは全く見せず、自分を偽っています。すごく性格の良い、でも天然でちょっと変わっていて目立つ子という自分を演じています。高校の卒業式で一言話すときなど、絶妙なタイミングで言葉をつまらせて泣き、周りを感動させて涙を誘いました。異性・同性に関係なく、好かれたい、注目されたいという気持ちが人一倍強いのですが、それは瞬間瞬間だけのことで、正直友達との別れはつらくはなく、どうでもいいと思っている冷酷な自分がいます」

 「このように、奇麗になること、目立つこと、好かれることが、私にとっては最優先で、それさえあれば他の…

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林公一

精神科医

はやし・きみかず 精神科医、医学博士。著書に「統合失調症という事実」「擬態うつ病/新型うつ病」「名作マンガで精神医学」「虚言癖、嘘つきは病気か」など。ウェブサイト「Dr.林のこころと脳の相談室」は、読者からの質問に林医師が事実を回答するもので、明るい事実・暗い事実・希望の持てる事実・希望の持てない事実を問わず、直截に回答するスタイルを、約20年にわたり継続中。