風疹と麻疹の混合ワクチンは自費で受けると1万円程度かかるが、自治体によっては補助がある
風疹と麻疹の混合ワクチンは自費で受けると1万円程度かかるが、自治体によっては補助がある

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関東で風疹拡大「30~50代男性は要注意」の理由

鈴木敬子 / 毎日新聞 医療プレミア編集部

 例年と比べ、関東地方で風疹の患者が大幅に増えているとして、厚生労働省が注意を呼びかけている。国立感染症研究所(感染研)によると、8月6日から12日までの1週間に千葉県や東京都を中心に39例の届け出があり、前週(7月30日~8月5日)から倍増した。

妊娠中の女性が感染すると子どもに障害の可能性

 感染研などによると、患者のせきやくしゃみなどの飛沫(ひまつ)を吸い込むことで感染し、14~21日(平均16~18日)の潜伏期間をへて、発熱、発疹、耳の下から首にかけてのリンパの腫れなどが表れる。一度感染すると、大部分の人は生涯風疹にかかることはない。ほとんどは数日で回復するため、「三日ばしか」と呼ばれることもある。

 しかし、妊娠中の女性が風疹にかかると胎児に感染し、先天性風疹症候群と呼ばれる障害を引き起こすことがある。厚労省によると、風疹に対する免疫が不十分な妊娠20週ごろまでの女性が感染すると、先天性風疹症候群の子どもが生まれる確率は、妊娠1カ月でかかった場合50%以上、妊娠2カ月の場合は35%--など高い確率で影響を及ぼす可能性がある。

厚生労働省などが2013年に作成した風疹の予防接種を呼びかけるポスター
厚生労働省などが2013年に作成した風疹の予防接種を呼びかけるポスター

 近年では、2013年に患者数が1万4000人を超える流行があり、この影響で12年10月~16年10月に45人の先天性風疹症候群の患者が報告された。

 予防には、ワクチン接種が最も有効だ。主には麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)の接種で95%以上の人が免疫を獲得できるとされ、時間の経過とともに免疫が低下してきた人には、追加のワクチンを受けることで免疫を増強させる効果がある。

 ただし、妊娠中は接種を受けられない。妊婦への感染を防止するためには、家族など周りの人が予防することで妊婦を感染から守る必要がある。また、接種後2カ月間は避妊しなければならない。

接種の有無は年齢と性別で異なる

 現在、定期接種は2回で、対象は1歳児と小学校入学前1年間にあたる幼児。しかし、1990年4月1日以前に生まれた人は接種を受ける機会があっても1回だ。また、先天性風疹症候群の予防を目的に中学生の女子のみに接種していた時期があるため、年齢と性別によって接種の有無にばらつきが生じている。自分が接種を受けているかどうか、母子健康手帳などの記録で確認する必要がある。

風疹単独ワクチン
風疹単独ワクチン

●1962年4月1日以前生まれ(56歳以上)の男女

予防接種を受けていない世代だが、大半の人が感染し、免疫があると考えられる。

●1962年4月2日~79年4月1日生まれ(39~56歳)の男性

中学生のとき、女性のみ学校で集団接種が行われていた。男性は対象から外れていたため、免疫のない人が多い。

●1979年4月2日~87年10月1日生まれ(30~39歳)の男女

中学生のときに男女とも接種対象だったが、医療機関での個別接種だったため、接種率が低く免疫のない人が多い。

●1987年10月2日~90年4月1日生まれ(28~30歳)の男女

男女とも幼児のときに予防接種対象となり、接種率は比較的高いが、風疹に感染する機会がさらに減少したため、接種を受けていなければ免疫がない人が比較的多い。

特に30~50代の男性と妊婦の家族は注意

 2016年度の感染研の感染症流行予測調査によれば、30代後半から50代男性の5人に1人、20代から30代前半男性の10人に1人が風疹の免疫を持っていなかったという。大人が風疹にかかると、子どもより発熱や発疹の期間が長くなったり、関節痛がひどくなったりすることがある。

歌手のクリス・ハートさんは2017年、厚生労働省に協力し、風疹予防のワクチン接種を呼びかけるポスターを発表した
歌手のクリス・ハートさんは2017年、厚生労働省に協力し、風疹予防のワクチン接種を呼びかけるポスターを発表した

 厚労省は8月14日、全国の自治体向けに文書を出し、30~50代男性▽妊婦の夫や子ども、その他の同居家族▽妊娠希望また妊娠する可能性の高い10代後半から40代の女性--のうち、風疹にかかったことがなく、接種歴も抗体が陽性であることも確認できない人に対しては、任意で風疹の予防接種を受けるよう呼びかけている。また、17日には日本産婦人科医会もウェブサイトに同様の警告を出し、妊婦は風疹にかからないよう注意を促した。

 MRワクチンは自費で受けると1万円程度かかる。自治体によっては、妊娠を希望する女性や、妊婦の夫らに対し、抗体検査や検査の結果、抗体価が低い場合に予防接種の費用を助成しているところもある。接種を希望する場合は、まず自分の住む自治体に問い合わせてほしい。

<参考ウェブサイト>

国立感染症研究所 風疹Q&A(2018年1月30日改訂) (https://www.niid.go.jp/niid/ja/rubellaqa.html)

職場における風しん対策ガイドライン (https://www.niid.go.jp/niid/images/idsc/disease/rubella/kannrenn/syokuba-taisaku.pdf)

厚生労働省 風しんについて (https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/)

なぜ大切?風しんワクチン (https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/vaccination/vaccine.html)

日本産婦人科医会 風疹流行の兆しあり!! (http://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2018/08/201808rubella-1.pdf)

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鈴木敬子

鈴木敬子

毎日新聞 医療プレミア編集部

すずき・けいこ 1984年茨城県生まれ。法政大卒。2007年毎日新聞社入社。岐阜支局、水戸支局、横浜・川崎支局を経て、15年5月からデジタルメディア局。

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