病気を知る教養としての診断学

小説「魔の山」にみる100年前の結核診断

津村圭 / 府中病院総合診療センター長

芸術作品に登場する「結核」という病の描かれ方【2】

 トーマス・マンの「魔の山」は1924年に発表されたドイツの小説で、前回ご紹介した小説・アニメーション映画「風立ちぬ」と同様、サナトリウム(結核療養所)が舞台です。あまりにも大部な小説(新潮文庫では上・下巻で約1500ページ)なので、読み終えるのに体力と気合が必要です。「魔の山」では主人公がさまざまな体験を通して精神的に成長していく姿が描かれ、教養小説(Bildungsroman)としても分類されています。医学・政治・芸術・神学・恋愛・政治など多彩な話題が取り上げられていますが、とりわけ肺結核については、現代でも通用するほど正確かつ詳細に描かれています。これに対し、小説・アニメの「風立ちぬ」は、夫婦のこまやかな愛情が主題となっており、肺結核という病気自体について、詳細な描写はありません。

 今回は、小説「魔の山」を通して、100年ほど前の肺結核の診断がどのように描かれているか見てみましょ…

この記事は有料記事です。

残り3522文字(全文3945文字)

津村圭

津村圭

府中病院総合診療センター長

つむら・けい 大阪府出身。1977年大阪市立大学医学部を卒業後、国立循環器病センター(現・国立循環器病研究センター)に心臓内科レジデントとして勤務。その後の28年間は大阪市立大学医学部教員として、学部学生、大学院学生、研修医、指導医、教員の指導と医学部カリキュラムの企画と作成に携わった。診療面では循環器内科をベースとしつつ、早い時期から原因疾患の判別が困難な症例で、診断を担当する総合診療医として従事。研究面では、各種疾病のリスクファクターについての臨床疫学研究を行い、ランセット(Lancet)など欧米医学誌で発表してきた。2014年1月から現職。総合診療医として地域医療に関わるとともに、初期、後期研修医の指導を担当、臨床研修室顧問も兼任する。地域医療を充実させるため院内に家庭医療専門医後期研修プログラムを立ち上げるなど、診療と教育をリンクさせた活動を現在も続けている。府中病院ウェブサイト

イチ押しコラム

実践!感染症講義 -命を救う5分の知識-

真菌マラセチア増殖が起こす「脂漏性皮膚炎」

 「これからは、どんなに疲れていても寝る前には必ずシャワーを浴びてください。起床時や帰宅後すぐにもシャワーを浴びるべきですが、寝る…

無難に生きる方法論

「楽天家はインフルエンザにならない」は本当?

 前回、インフルエンザの予防とその費用をどう負担するかをみなさんと一緒に考えた。最善の処置をとってもインフルエンザ感染を完全には防…

理由を探る認知症ケア
 

みんなで一生懸命考えた「歯ブラシをかむ理由」

 ◇歯ブラシをかんでしまうKさん 長女夫婦と同居していたKさん(60代、女性)が、こたつの敷布団に足をひっかけて転び、太ももの骨を…

超高齢化時代を生きるヒント
 

技量も経験もない「かかりつけ医」という幻想

 「かかりつけ医を持ちましょう」――。こんな言葉を聞いたことがあると思います。厚生労働省や医師会は、かかりつけ医を持つことを推進し…

ボストン発 ウェルエイジング実践術
全国から揚げ物が集まる「あげあげサミット」。日本人も揚げ物は大好きだ=滋賀県湖南市で2016年9月3日

「週1回フライドチキン」が死亡リスクを高める?

 コロッケにフライドチキン、トンカツに天ぷら。油のいいにおいがして、ジューシーで熱々の揚げ物がお好きな方は多いでしょう。でもご用心…

Dr.米井のアンチエイジング・セルフチェック チャートでわかる、あなたの機能年齢 北海道大学COI×医療プレミア