実践!感染症講義 -命を救う5分の知識-

「あなたと家族と人類」を耐性菌から守る方法

谷口恭・太融寺町谷口医院院長
  • 文字
  • 印刷
腰につけた布「フラッグ」を取り合って追いかけ合う子供たち。抗菌薬開発は細菌の耐性化とのイタチごっこだ
腰につけた布「フラッグ」を取り合って追いかけ合う子供たち。抗菌薬開発は細菌の耐性化とのイタチごっこだ

 あけましておめでとうございます。「実践!感染症講義」の167回目です。2015年7月の連載開始から3年半がたちました。それでも感染症は実にさまざまで、取り上げていない重要な病原体もたくさんあります。それらもこれから紹介しますが、同時にとても大切な問題は、角度を変えて繰り返し取り上げたいと考えています。そうした大切なことの一つで過去に何度か強調し、今年も強く訴えたいのが、抗菌薬が効かない「薬剤耐性菌」の問題です。解決には、読んでいるあなたの力が欠かせません。医療従事者だけでなく、一般の方の行動が大切なのです。

 薬剤耐性菌は多くの人を殺しています。英政府の専門家チームが14年に推計した結果では現在、少なめに見積もっても世界で年間約70万人が、耐性菌に関連した原因で死亡しています。チームはさらに、こうした「耐性菌関連死亡」は2050年には年間1000万人に膨れ上がり、がんによる死者数を超えて、世界の死因第1位になると予測しました。この予測を表すグラフは、過去の記事(薬剤耐性菌の新たな恐怖 クロストリジウム・ディフィシル)で紹介しましたが、今回も掲載します。

 このグラフをよく見て考えてほしいことがあります。1000万人もを死に追いやる「薬剤耐性菌」を生み出しているのは、我々自身だということです。じゃあ“犯人”は誰なのか。医師、患者、ネット業者、畜産業者、(海外の)薬局などを挙げられるかもしれません。でも罪を押し付け合わず「これから誰もができること」を前向きに考えたいと思います。

この記事は有料記事です。

残り3320文字(全文3969文字)

谷口恭

太融寺町谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。太融寺町谷口医院ウェブサイト