“子ども食堂”の時代―親と子のSOS―

「子どもの栄養状態改善」存在感増すフードバンク

可知悠子・北里大学講師
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 前回の記事「子どもの食格差生む『給食空白地帯』をなくせ」で、学校給食の完全実施が子どもの食格差対策の核になることを科学的根拠を交えてお伝えしました。今は豊かな家庭生活を送っている子どもでも、親が失業したり、収入が減ったりするといつ生活が困窮するか分かりません。生活困窮は栄養不足や肥満など健康格差につながります。その際、学校給食のようにすべての子どもを対象とする「普遍的対策」は、「食」の保障の観点から重要です。一方で、学校給食だけでは食格差は解消されません。貧困状態の子どもを対象とする「選別的対策」を取る必要もあります。今回は、国内外の選別的な食支援の事例を紹介します。

 米国では1960年代から、貧困世帯に対してSNAP(Supplemental Nutrition Assistance Program)という栄養補助プログラムを提供しています。2015年時点で米国民の7人に1人が恩恵を受けており、その半数は18歳以下の子どもです。SNAP受給者には、EBT(Electronic Benefit Transfer)と呼ばれるデビットカードが支給され、承認された店で食料品を買うことができます。SNAPは数百万人を貧困から救っているとされ、SNAPによって貧困の子どもの数が28%減ったとの推計もあります(※1)。

 さらに米国には、低所得の産前産後の女性と5歳以下の乳幼児に特化したWIC(Women, Infants, and Children program)という栄養補助プログラムもあります。WICは、食品の提供に加え、栄養教育やカウンセリング、保健福祉サービスへの紹介を行っています。メリーランド大学医学部のブラック博士(小児科学)らは04年、WICを利用している世帯の乳児(1歳未満)は非利用世帯と比べ…

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可知悠子

北里大学講師

かち・ゆうこ 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。2006年から10年間、臨床心理士として子どもや女性のカウンセリングにあたる。帝京大学医学部衛生学公衆衛生学講座助教、日本医科大学衛生学公衆衛生学教室助教を経て、18年4月から北里大学医学部公衆衛生学単位講師。東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学教室客員研究員、国立成育医療研究センター社会医学研究部共同研究員、首都大学東京客員准教授。共著に「子どもの貧困と食格差~お腹いっぱい食べさせたい」(大月書店)。自身も3歳児の子育て中。労働者とその子どもの健康の社会格差をテーマに研究を行っている。