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HPVワクチン「推奨派敗訴」と接種の是非は別問題

谷口恭・太融寺町谷口医院院長
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HPVワクチンについて議論する県議会を見つめる母親たち
HPVワクチンについて議論する県議会を見つめる母親たち

 HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンに関連して、国内外の関係者から大変注目されていた名誉毀損(きそん)訴訟の判決が出ました。結果は、2017年11月にジョン・マドックス賞を受賞した村中璃子医師らの「敗訴」です。村中氏はHPVワクチンを推奨しており、判決は「推奨派の医師が敗訴」という理由ですでに物議を醸しています。今回は判決を機会に、HPVワクチンについて改めて考えます。過去に繰り返し述べてきたように、これは子宮頸(けい)がんの一部や「尖圭(せんけい)コンジローマ」などの予防に使うワクチンです。まずは簡単に、訴訟の経緯を振り返っておきましょう。

 16年6月、村中氏は月刊誌「Wedge(ウェッジ)」(東海道・山陽新幹線の中で販売されています)とウェブ上に記事を書き、当時信州大学医学部長の池田修一氏が発表した研究結果が「捏造(ねつぞう)」であると主張しました。その研究は「HPVワクチンがマウスの脳に損傷を与えた可能性がある」とするものでした。池田氏は、このワクチン接種後の神経障害に関する、厚生労動省研究班の代表を務めていました。

 村中氏が「捏造」という言葉を用いたことに対し、池田氏は同年8月、名誉毀損に当たるとして、村中氏と同誌編集長及び雑誌社に対し、約1100万円の損害賠償や謝罪広告の掲載などを求めて東京地裁に提訴しました。

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谷口恭

太融寺町谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。太融寺町谷口医院ウェブサイト