今回は「一口に『認知症』といってもさまざまで、60種類以上もの病気がある」という話をします。医学的に認知症とは、患者さんの「状態」を表す言葉で、「病名」ではないのです。「そんな細かいこと、専門家以外にはどうでもいい」と思われそうですが、そうではありません。「この状態はどの病気のせいか」によって、治る見通しも、薬の使い方など治療法も、大きく変わってくるからです。前回の記事で紹介した患者さんは、正しい病名が分かるとともに、飲まなくてよい薬をやめ、副作用から解放されて穏やかな暮らしに戻れました。「正しい病名」は患者さんの生活にとって大切なのです。

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小田陽彦

ひょうごこころの医療センター認知症疾患医療センター長

おだ・はるひこ 1977年、兵庫県西宮市出身。兵庫県立ひょうごこころの医療センター精神科医師。神戸大学医学部卒。医学博士。神戸大学医学部精神科助教、兵庫県立姫路循環器病センター等を経て2017年4月より現職。日本精神神経学会専門医・指導医。日本老年精神医学会専門医・指導医・評議員。著書に「科学的認知症診療」(シーニュ社、2018)