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ひきこもりに悩む親の一番の願いは「死なないで」

石蔵文信・大阪大学招へい教授
ひきこもりの相談に当たる専門職員=新潟県柏崎市で2019年6月5日
ひきこもりの相談に当たる専門職員=新潟県柏崎市で2019年6月5日

 5月28日、川崎市多摩区でひきこもり男性が小学生らを刃物で襲い、2人が死亡、18人が重軽傷を負う事件が起きた。容疑者が自分で命を絶ったため、事件後「なぜ一人で死ねなかったのか?」という声が広がった。

 被害者と関係者がそう考えるのは当然の感情と思う。しかし、ひきこもり支援をしている団体の関係者は「社会から孤立し、うらみを抱いている人たちに『一人で死んでくれ』と言い放つことは自殺や犯罪の誘発につながる」と警鐘を鳴らし、大きな社会的論争を引き起こしている。

 6月1日には東京都練馬区で、やはりひきこもりで暴力をふるっていた息子を元農林水産事務次官が殺害する事件が起きた。小学校の運動会の音に文句を言う息子が凶行を起こすのではないか?と疑い、「他人に危害が及んではいけない」と考えて殺害したという。川崎市の事件が影響したとも言われている。

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大阪大学招へい教授

いしくら・ふみのぶ 1955年京都生まれ。三重大学医学部卒業後、国立循環器病センター医師、大阪厚生年金病院内科医長、大阪警察病院循環器科医長、米国メイヨー・クリニック・リサーチフェロー、大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻准教授などを経て、2013年4月から17年3月まで大阪樟蔭女子大学教授、17年4月から大阪大学人間科学研究科未来共創センター招へい教授。循環器内科が専門だが、早くから心療内科の領域も手がけ、特に中高年のメンタルケア、うつ病治療に積極的に取り組む。01年には全国でも先駆けとなる「男性更年期外来」を大阪市内で開設、性機能障害の治療も専門的に行う(眼科イシクラクリニック)。夫の言動への不平や不満がストレスとなって妻の体に不調が生じる状態を「夫源病」と命名し、話題を呼ぶ。また60歳を過ぎて初めて包丁を持つ男性のための「男のええ加減料理」の提唱、自転車をこいで発電しエネルギー源とする可能性を探る「日本原始力発電所協会」の設立など、ジャンルを超えたユニークな活動で知られる。「妻の病気の9割は夫がつくる」「なぜ妻は、夫のやることなすこと気に食わないのか エイリアン妻と共生するための15の戦略」など著書多数。