ER Dr.の救急よもやま話

「熱中症だな」思い込みの陰に危険な別の病気

志賀隆・国際医療福祉大准教授/同大成田病院救急科部長
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近くの最高気温が40度を超えた日に、芝生のスプリンクラーの水を浴びる子どもたち=新潟県上越市の高田公園芝生広場で2019年8月14日
近くの最高気温が40度を超えた日に、芝生のスプリンクラーの水を浴びる子どもたち=新潟県上越市の高田公園芝生広場で2019年8月14日

 前回の記事に続いて、熱中症の話をします。8月も末ですが、まだ暑い日が多く、私の病院にも熱中症が疑われる患者さんが多く訪れています。ただ、その中には「似たような症状が出る他の病気」の人や、「熱中症ではあるが、同時に他の重い病気も発症している」人がいらっしゃいます。こうした人たちを「今なら当然、熱中症」と決めつけて「休んでもらって点滴すれば大丈夫」と考えてしまうと、治療に失敗しかねません。今回は熱中症の診療の際に我々がどのようなことに気をつけているかを解説したいと思います。

 まず、熱中症についておさらいしましょう。熱中症は、屋外(エアコンの利いていない屋内も)で活動もしくは長時間過ごしたあとに起こることが多いです。比較的軽い場合(I度)の症状としては、目まい、立ちくらみ、大量の発汗、こむら返りなどがあります。やや重い場合(II度)では、頭痛、嘔吐(おうと)、倦怠(けんたい)感、判断力の低下が表れます。重症(III度)だと意識がもうろうとなったり、けいれんが起きたり、歩くことができなくなります。

 さて、読者の方が「熱中症だと思うが、水分もとれるし歩ける」という状態の場合は、エアコンの利いた環境もしくは日陰で、スポーツドリンクなどの水分をとりながら休むことをお勧めします。以前にお伝えしましたが、カフェインやアルコールの入った飲み物を飲むと、尿が出やすくなってかえって体内の水分を減らしてしまい逆効果ですのでご注意ください。

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志賀隆

国際医療福祉大准教授/同大成田病院救急科部長

しが・たかし 1975年、埼玉県生まれ。2001年、千葉大学医学部卒業。学生時代より総合診療・救急を志し、米国メイヨー・クリニックでの救急研修を経てハーバード大学マサチューセッツ総合病院で指導医を務めた救急医療のスペシャリスト。東京ベイ・浦安市川医療センター救急科部長などを経て20年3月から国際医療福祉大学成田病院救急科部長(同大医学部准教授)。安全な救急医療体制の構築、国際競争力を産み出す人材育成、ヘルスリテラシーの向上を重視し、日々活動している。「考えるER」(シービーアール、共著)、「実践 シミュレーション教育」(メディカルサイエンスインターナショナル、監修・共著)、「医師人生は初期研修で決まる!って知ってた?」(メディカルサイエンス)など、救急や医学教育関連の著書・論文多数。