環境と健康の深い関係

紙巻きより安全と宣伝される加熱式たばこの現実

遠山千春・東京大学名誉教授(環境保健医学)
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加熱式たばこを吸って蒸気を吐き出す男性=久保聡撮影
加熱式たばこを吸って蒸気を吐き出す男性=久保聡撮影

 日本では「加熱式たばこ」が世界に先駆けて2014年に発売されました。それ以降、吸う人が急激に増え、各銘柄の使用者を合わせた延べ数は、すでに900万人を超えたとみられます。加熱式たばことは、たばこの葉を専用の容器に入れて電気的に加熱し、ニコチンや香料を含む微粒子が霧状に漂う蒸気(エアロゾル)を発生させるものです。一見、水蒸気のように見えますが、専門的にはエアロゾルと呼ばれ、大気汚染物質として広く知られるPM2.5と同程度の大きさの粒子の集まりです。たばこ会社は「加熱式だから煙ではなく『蒸気』である」「従来の紙巻きたばこに比べて有害成分が90%以上低減している」「健康へのリスク低減が見込まれる」としています。こうした中で7月26日、世界保健機関(WHO)は「たばこの世界的流行に関する報告2019」 を発表し、「加熱式たばこなどの新型たばこ製品には、有害物質が含まれているために健康上のリスクがあるので、紙巻きたばこと同様の規制が必要だ」との見解を示しました。今回は、加熱式たばこの安全性について広まっている誤解と、その背景の問題について説明します。

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遠山千春

東京大学名誉教授(環境保健医学)

とおやま・ちはる 1950年、東京都出身。東京大学医学部保健学科卒、ロチェスター大学大学院修了。筑波大学、北京大学、中国医科大学の客員教授。医学博士、Ph.D。国立公害研究所(現・国立環境研究所)領域長、東京大学医学系研究科疾患生命工学センター教授を経て、2015年4月より「健康環境科学技術 国際コンサルティング(HESTIC)」主幹。世界保健機関、内閣府食品安全委員会、環境省などの専門委員、日本衛生学会理事長、日本毒性学会理事、日本医学会連合理事などを歴任。