知ってほしい「認知症の大事な話」

睡眠薬など4剤「薬漬け」で万引きをし続けた女性

小田陽彦・ひょうごこころの医療センター認知症疾患医療センター長
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 前々回は風邪薬、前回は胃薬で「認知症もどき」になることがあると説明しました。今回は「睡眠薬」の一部でも「認知症もどき」に陥りかねないという話です。問題の薬は「ベンゾジアゼピン受容体作動薬」と呼ばれる仲間で、「不安を和らげる」「眠気を催す」「筋肉のけいれんを止める」などさまざまな作用があり、俗に「安定剤」とも呼ばれます。この薬の副作用でひどい目にあった方の事例をご紹介します。

 ベンゾジアゼピン受容体作動薬は、強い依存性のある薬です。1日か2日飲むくらいならたいてい大丈夫ですが、2週間以上毎日飲むと身体が薬に慣れ切り、飲むのをやめたり量を減らしたりすると、不眠▽不安▽焦燥感▽頭痛▽嘔吐(おうと)▽せん妄▽手足のふるえ(振戦)▽けいれん発作――といった禁断症状(離脱症状ともいいます)が出現する危険があります。

 筋肉のけいれん発作が起こる「てんかん」という病気の治療でこの薬を使う場合は長期使用もやむを得ないのですが、単なる不眠や不安の治療でこの危険な薬を長期使用する必要性はほとんどありません。

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小田陽彦

ひょうごこころの医療センター認知症疾患医療センター長

おだ・はるひこ 1977年、兵庫県西宮市出身。兵庫県立ひょうごこころの医療センター精神科医師。神戸大学医学部卒。医学博士。神戸大学医学部精神科助教、兵庫県立姫路循環器病センター等を経て2017年4月より現職。日本精神神経学会専門医・指導医。日本老年精神医学会専門医・指導医・評議員。著書に「科学的認知症診療」(シーニュ社、2018)