実践!感染症講義 -命を救う5分の知識-

人ごとでないフィリピン「ワクチン不信」と麻疹急増

谷口恭・太融寺町谷口医院院長
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子供に予防接種をする医師
子供に予防接種をする医師

 デング熱のワクチンが原因と考えられる小児の死亡がフィリピンで相次ぎ、いったん発売になったワクチンの販売が中止され、さらにその中止を決定したフィリピン政府を世界保健機関(WHO)が支持した、ということを過去の連載「62人死亡? 比デング熱ワクチン導入の“失敗” 」で述べました。その後、フィリピンでは狂犬病の偽物ワクチンが出回り、さらに麻疹が流行し、大変な事態となっています。そこで今回はフィリピンに最近起こったことをまとめ、最後に日本人も「対岸の火事」と言ってはいられないことを述べたいと思います。

 まずはデング熱ワクチンのその後です。前回の連載では「62人がワクチンで死亡した可能性」を紹介しましたが、その後、”犠牲者”の数は増えています。香港の英字新聞「South China Morning Post」に掲載された長文の記事「フィリピンの子供の死亡はデング熱ワクチンに関連するのか? 」などからポイントをまとめてみたいと思います。

 デング熱は日本には存在しませんが(ただし2014年には東京で流行しました)、熱帯地方ではよくある感染症です。WHOや上記の記事によると、推定で毎年3億9000万人が感染、うち1億人が何らかの症状を呈し、50万人が重症化します。死亡するのは約2万人で多くは小児と妊娠中の女性です。

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谷口恭

太融寺町谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。太融寺町谷口医院ウェブサイト