ER Dr.の救急よもやま話

救急診療の現場で医師が禁煙を勧める理由

志賀隆・国際医療福祉大医学部救急医学教授(同大病院救急医療部)
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 救急外来で出会った患者さんに、よくお伝えしているセリフがあります。「喉頭がん、食道がん、肺がん、胃がん、肝臓がん、膀胱(ぼうこう)がん、などのリスクが減り、健康で長生きできる方法がありますよ!」「しわが増えにくくなる、歯がきれいになる、そしてきれいになる方法がありますよ!」。これは禁煙のお勧めです。救急医の私が救急外来で禁煙の話をしているというと「なぜ忙しい救急外来で?」と思われるかもしれません。これには理由があります。年齢を重ねて救急外来に運ばれる患者さんの病気の原因に、喫煙が多いからです。今回は、救急医から見た禁煙の重要性をお話ししたいと思います。

 65歳の田中さんは、一人暮らしで、家で倒れてしまいました。半日程度たって救急外来に来た時には左半身がまひしていました。検査の結果、診断は脳梗塞(こうそく)でした。

 脳梗塞になった大きな要因の一つは、10代から吸っているたばこだろうと考えられました。ご本人にとっては「太く短く生きればいい」「日々の楽しみはやめられない」だったかもしれません。でも田中さんは涙を流しながら「あの時たばこをやめていれば」と後悔しました。いざ病気になると、こういう方がほとんどなのです。

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志賀隆

国際医療福祉大医学部救急医学教授(同大病院救急医療部)

しが・たかし 1975年、埼玉県生まれ。2001年、千葉大学医学部卒業。学生時代より総合診療・救急を志し、米国メイヨー・クリニックでの救急研修を経てハーバード大学マサチューセッツ総合病院で指導医を務めた救急医療のスペシャリスト。東京ベイ・浦安市川医療センター救急科部長などを経て20年6月から国際医療福祉大学医学部救急医学教授(同大学病院救急医療部)。安全な救急医療体制の構築、国際競争力を産み出す人材育成、ヘルスリテラシーの向上を重視し、日々活動している。「考えるER」(シービーアール、共著)、「実践 シミュレーション教育」(メディカルサイエンスインターナショナル、監修・共著)、「医師人生は初期研修で決まる!って知ってた?」(メディカルサイエンス)など、救急や医学教育関連の著書・論文多数。