知ってほしい「認知症の大事な話」

家族こそ知って「認知症のような副作用が出る薬」

小田陽彦・ひょうごこころの医療センター認知症疾患医療センター長
  • 文字
  • 印刷

 この連載ではこれまで「『かぜ薬』『胃薬』『睡眠薬』などの副作用で、認知症もどきの症状が出て、薬をやめるとあっさり回復した」事例を、いくつか紹介してきました。今回は、さらに他のいくつかの病気の治療薬でも、同じようなことが起こるという話をします。もとの治療薬を使うことが悪いわけではないのですが、こうした副作用が起きうると知っていれば、家族など周囲の人が「認知症じゃなくて副作用かな」と疑って、状況の改善につなげられるからです。

 例えば「骨粗しょう症」という病気があります。骨がもろくなり骨折しやすくなる病気です。高齢女性に比較的多く、自覚症状はないのですが、骨折を予防するためには長期間の治療が必要です。治療薬は何種類もあるのですが、そのうちの「活性型ビタミンD3製剤」は、血液中でカルシウムの濃度が高くなり過ぎる「高カルシウム血症」を起こすことがあります。この薬を飲むのと同じ日に、体内のカルシウムを増やす別の薬や、薬でなくてもそうしたサプリメントを飲むと、特にその危険が大きくなります。

 高カルシウム血症が起こると、便秘、吐き気、嘔吐(おうと)、のどの渇き、倦怠(けんたい)感といった身体的な症状のほか、せん妄、錯乱、昏睡などの精神的な症状も出て、認知症と間違われることがあります。高カルシウム血症かどうかは血液検査で分かり、薬が原因である場合はその薬を中止するだけで症状が劇的に改善します。

この記事は有料記事です。

残り3200文字(全文3798文字)

小田陽彦

ひょうごこころの医療センター認知症疾患医療センター長

おだ・はるひこ 1977年、兵庫県西宮市出身。兵庫県立ひょうごこころの医療センター精神科医師。神戸大学医学部卒。医学博士。神戸大学医学部精神科助教、兵庫県立姫路循環器病センター等を経て2017年4月より現職。日本精神神経学会専門医・指導医。日本老年精神医学会専門医・指導医・評議員。著書に「科学的認知症診療」(シーニュ社、2018)