
もう秋ですね。以前なら赤トンボがたくさん見られた季節ですが、今はあまりみられません。生き物の変化としてはほかにも、ミツバチの大量死が報告され、都会からはツバメやスズメが姿を消しています。こうした変化は多くの調査研究から、殺虫剤が原因であることは疑いの余地がなさそうです。この状況が続くと、これが当たり前の環境になってしまいます。そして生態系の破壊が人々の健康を脅かすのにつながることは、DDTやリンデン(ガンマBHC)などの「有機塩素系殺虫剤」を巡る歴史を顧みると想像に難くありません。日本で現在使われている農薬(殺虫剤、除草剤、殺菌剤など)は国が安全と認めたものですが、この記事では、現在、広く用いられている「ネオニコチノイド系殺虫剤」(ネオニコ)について、その安全性が「想定外のこと」で崩れる可能性がないのか、一緒に考えてみましょう。
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遠山千春
東京大学名誉教授(環境保健医学)
とおやま・ちはる 1950年、東京都出身。東京大学医学部保健学科卒、ロチェスター大学大学院修了。筑波大学、北京大学、中国医科大学の客員教授。医学博士、Ph.D。国立公害研究所(現・国立環境研究所)領域長、東京大学医学系研究科疾患生命工学センター教授を経て、2015年4月より「健康環境科学技術 国際コンサルティング(HESTIC)」主幹。世界保健機関、内閣府食品安全委員会、環境省などの専門委員、日本衛生学会理事長、日本毒性学会理事、日本医学会連合理事などを歴任。