医療プレミア特集

避難生活や片付けで病気やけがを防ぐには

高木昭午・毎日新聞医療プレミア編集部
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台風19号の影響で冠水した宮城県丸森町の市街地。中央右の橋の下が阿武隈川=2019年10月13日午前11時27分、本社ヘリから
台風19号の影響で冠水した宮城県丸森町の市街地。中央右の橋の下が阿武隈川=2019年10月13日午前11時27分、本社ヘリから

 9月上旬の台風15号に続き、今月は台風19号が上陸しました。19号の被害は、浸水家屋が1万棟を超える見込みで、自宅の損傷や浸水で避難生活をしたり、後片付けに追われたりと苦労されている方も多いでしょう。そうした状況ですと、病気にかかる心配も出てきます。被災して健康保険証が手元にない時など、どうしたらよいか。厚生労働省や医学会の発表からまとめました。

保険証なしでも病院に

 まず、被災に伴い紛失したり、自宅から持ち出せなかったりして「手元に保険証がない」場合。実は、これはあまり心配しなくて大丈夫です。病院に行って、聞かれたことにいくつか答えれば、保険証なしでも保険診療を受けられます。

 厚労省は同省のサイト で、被災者のための情報をまとめています。医療に加え、介護や労働、年金に関する情報もあるのですが、今回は医療に関する内容を紹介します。

 このまとめサイトに記された情報の一つが「保険証なしで大丈夫」です。診療を受ける本人の名前と生年月日、連絡先(電話番号など)▽会社の保険か国民健康保険か▽勤め先の名称や、自宅の住所--などを答えればよいのです。 

 同省保険局医療課は「もともと緊急の場合は保険証なしでも保険診療が受けられる制度がある。今回については特に、全国の自治体や医療機関などに『なしでOK』と通知を出した」と話します。

インフルよりノロに注意

 さて、避難生活では「インフルエンザ」や「ノロウイルス」などの感染症が気になります。特に今年はすでに、異例の早さでインフルエンザの流行が始まっています。ただ、同省健康局結核感染症課は「インフルエンザについては、過剰に心配することはない」といいます。

 それは、人が集まってすぐにインフルエンザがはやり出すことはあまりないからです。心配されるのは、1カ月程度たってから。台風19号の被害が大きく、避難が長びくことが心配される長野県や宮城県などでも「まだ流行が始まっていない」(同課)といいます。

 一方で、下痢などを起こすノロウイルスは、感染力が強いのが特徴です。このため、同課は「とにかく手洗いをしっかりする。それがインフルエンザの予防にもつながる」と訴えます。食事を作る前、食べる前、トイレに行った後などは、しっかりと手を洗うことが大切 です。

後片付けは「けがをせず、ほこりを吸わず」

 水害では家を片付ける時に、汚泥が乾いたほこりなどが感染症を呼び込む心配もあります。この対策は、同省がポスターにまとめています

 けがをしないよう丈夫な手袋や底の厚い靴を身につけ、長袖の服などを着て肌を露出しない▽けがをしたら傷口は流水で洗って消毒し深い傷や汚れた傷は医師に相談を▽ドアと窓を開けてしっかり換気▽汚泥を取り除きしっかり乾かす▽ほこりを吸ったり目に入れたりしないようゴーグルやマスクをつける--などが大切だそうです。

台風15号の強風で吹き飛ばされたがれきを片付ける女性。多くの住宅の屋根はブルーシートに覆われていた=千葉県鋸南町大帷子で2019年9月13日
台風15号の強風で吹き飛ばされたがれきを片付ける女性。多くの住宅の屋根はブルーシートに覆われていた=千葉県鋸南町大帷子で2019年9月13日

結膜炎にご注意

 なお、関連して日本眼科医会は「結膜炎に注意して」と呼びかけています。昨年7月の西日本豪雨災害で被災した岡山県倉敷市の避難所で同会が診療した目の病気の患者92人のうち、63人が結膜炎だったからです。

 同会は「(水害で押し寄せた)土砂や汚泥が乾くと、多量の土ぼこりがあがると予想される。(後片付けなどの際は)手を清潔に保つこと。汚れた手で直接目に触れないように。特にコンタクトレンズを装着脱する際には、手指を清潔にしておくように注意を」などと訴えます。

エコノミークラス症候群や低体温症

 また厚労省は、先ほど紹介したまとめサイトとは別に「避難所生活を過ごされる方々の健康管理に関するガイドライン」を作って公表しています。まとめサイトよりさらに細かく、さまざまな病気の予防法を説明しています。

 このガイドラインは2011年の東日本大震災をきっかけに作られましたが、震災の被災者に限らず、広く避難生活一般に適用できます。厳密にいうと、避難所を管理する自治体などに対する内容ですが、避難者にも十分に参考になります。

 たとえば、車の中で同じ姿勢でじっとしている人などに起きる「エコノミークラス症候群」の予防法が記されています。血行が悪くなって血管内に血の塊ができ、胸の痛みや呼吸困難を起こす「肺塞栓」などの病気を起こすのです。長い時間飛行機に乗り「エコノミークラス」の比較的狭い座席で過ごした人に起きたためにこの名がつきましたが、飛行機でなくても姿勢を変えずにじっとしていれば同じことです。

 狭い車内で寝起きする人などがこれを予防するには、定期的に体を動かす▽十分に水分をとる▽アルコールやコーヒーなどは尿を出やすくする作用があり、とった以上の水分を体外に出してしまうので避ける--などが大切だそうです。

2016年の熊本地震で被災し、避難所で毛布や布団で寒さをしのぐ人たち=熊本県南阿蘇村で同年4月19日
2016年の熊本地震で被災し、避難所で毛布や布団で寒さをしのぐ人たち=熊本県南阿蘇村で同年4月19日

 また、これから気温が下がる季節ですが、体温が下がりすぎる「低体温症」にも要注意です。お年寄りや子どもが陥りやすい症状で、手足が冷たくなり、体が震えます。

 陥らないにはまず、体温を上げるための栄養分、水分の補給をすること。厚着をし、帽子やマフラーで顔や首を覆うのも大切です。それでも震えるようであれば、地面に敷物を敷く▽ぬれた物は脱ぐ▽毛布にくるまる--などして温まるのがよいそうです。

 ほかに「妊婦や出産後まもない女性、乳幼児向け」「高齢者向け」などの注意点も入っています。ぜひご活用ください。

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高木昭午

毎日新聞医療プレミア編集部

たかぎ・しょうご 1966年生まれ。88年毎日新聞社入社。94年から東京、大阪両本社科学環境部、東京本社社会部などで医療や原発などを取材。つくば支局長、柏崎通信部などを経て、17年に東京本社特別報道グループ、18年4月から医療プレミア編集部記者。