実践!感染症講義 -命を救う5分の知識-

HIV陽性者の「日ごろのケア」を担う総合診療医

谷口恭・太融寺町谷口医院院長
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「世界エイズデーイベント」で点灯された「レッドリボンツリー」=東京・JR新宿駅東口で1999年
「世界エイズデーイベント」で点灯された「レッドリボンツリー」=東京・JR新宿駅東口で1999年

 きょう12月1日は世界保健機関(WHO)が定める「世界エイズデー」(World AIDS Day)です。たくさんの病気がある中で、WHOが「世界の日」を設けている疾患は限られ、その一つであるエイズは、それだけ世界が一丸となって取り組んでいかなければならない疾患なのです。世界エイズデーのページには「HIV/AIDSの意識を高めることを目的とする」という文言があります。この連載では、前々回はHIV(エイズウイルス)治療の新たな常識である「U=U」について説明し、前回は日本では普及していない「PrEP/PEP(暴露前・暴露後予防)」について述べました。今回は、先日の「日本エイズ学会」で私が発表した「HIVは、エイズ専門医だけでなく総合診療医が診るべきだ」という内容を紹介したいと思います。

 この学会は毎年、世界エイズデーに合わせて学術大会を開きます。今年の大会は11月27日から29日まで熊本市での開催でした。私は「クリニックで診るHIV感染症~診断と診断後のプライマリ・ケア~」と題して発表しました。プライマリ・ケアとは、身近にあって、何でも相談に乗ってくれる総合的な医療のことです。実は、過去にも同じようなタイトルでいくつかの学会で発表しています。「HIVは、エイズ拠点病院だけでなく、すべての医療機関で対応すべきであり、特に気軽に受診できる総合診療のクリニックの役割が重要」というのが十数年前から私が言い続けていることです。

 過去にも述べたように(参考:「差別される病 2002年タイにて」)、私がHIVに関わりたいと思ったのは研修医時代にタイのエイズ施設にボランティアとして参加したことがきっかけです。私が初めてその施設に赴いた02年には、まだタイでは抗HIV薬がなく、感染すると死を待つしかありませんでした。04年にようやく無料で抗HIV薬が支給されるようになりましたが、当時は世間の差別や偏見が根強く、患者は、身体的な…

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谷口恭

太融寺町谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。太融寺町谷口医院ウェブサイト