実践!感染症講義 -命を救う5分の知識-

アジアで猛威のデング熱 温暖化で日本にも

谷口恭・太融寺町谷口医院院長
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200人近いデング熱の患者が診察を待つ病院の待合室=マニラ市で2010年9月、矢野純一撮影
200人近いデング熱の患者が診察を待つ病院の待合室=マニラ市で2010年9月、矢野純一撮影

 感染症が他の病気と異なる最大の特徴の一つが「一気に広がること」で、実際「アウトブレイク(集団感染、大発生)」という言葉が使われるのは感染症の領域だけです。世界的にみると21世紀には、SARS(重症急性呼吸器症候群)、新型インフルエンザ、エボラ出血熱、ジカ熱などのアウトブレイクがあります。日本でも麻疹や風疹が一気に流行することが過去数年間に何度かありました。今年(2019年)は、国内ではさほど注目に値する感染症はなかったかもしれませんが、アジアのほぼ全域で猛威を振るっている感染症があり、今後日本で広がる可能性も十分にあります。それは「デング熱」です。デングウイルスが起こす病気で、突然の発熱で始まり、激しい頭痛、関節や筋肉の痛み、発疹などがみられます。14年には日本でも東京を中心に流行しましたが、その後は国内では流行せず、今年になって国内感染を疑う報告が3例あっただけです。しかし、アジア諸国では史上初ともいえるほど蔓延(まんえん)しています。今回は最近のデング熱のアジアでの広がりを紹介し、これからの対策について述べてみたいと思います。

 まずは私がどのように海外の情報を収集しているかを紹介しておきます。太融寺町谷口医院の患者さんは比較的若い方が多く、観光、出張・駐在、留学、ボランティア、バックパッカーなどで短期でも長期でもアジア諸国に出かける人が大勢います。そのような患者さんに助言するために、日ごろから現地の情報を複数のソースから入手することに努めています。現地の新聞の英語版ウェブサイトや各国の行政の英語のページは大変貴重な情報源ですが、全体をまとめた情報を入手するときはIAMAT(旅行者のための医学的支援の国際連盟、International Association for Medical Assistance to Travelers)という国際非営利団体のサイトを参照します。

 そのIAMATによれば、現在アジアではほとんどの国でデング熱が「アウトブレイクしている」とされています。例外は、日本、韓国、北朝鮮、モンゴルくらいです。IAMAT以外ではECDCと呼ばれる、EUが管轄している旅行者のための組織があり、そのウェブサイトは世界の感染症の流行を知るのに有用です。デング熱については流行地域の分かりやすい地図が紹介されており、アジアで大流行していることが分かります。

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谷口恭

太融寺町谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。太融寺町谷口医院ウェブサイト