知ってほしい「認知症の大事な話」

2週間の断酒で「認知症状態」から回復した高齢者

小田陽彦・ひょうごこころの医療センター認知症疾患医療センター長
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 明けましておめでとうございます。新年で、お酒を楽しんでいらっしゃる方が多いことでしょう。今回は「お酒と認知症」のお話をします。認知症の患者さんをみる医師としては、「お酒の飲み過ぎで脳が萎縮し、認知症のような状態になる」方がいることを知ってほしいと思います。そして、お酒で起きた「認知症のような状態」は、薬では治りません。一方、お酒をやめることで、よくなる方は多いのです。

 アルコールを大量に飲み続けると、認知症になりやすくなることは、さまざまな研究で報告されています。世界保健機関(WHO)の基準では、1日あたりのアルコール摂取量が、男性なら60g(日本酒で3合弱)を超す人、女性なら40g(同2合弱)を超す人は、アルコールによるさまざまな害が起こる「高リスク群」に該当します。この基準を超える飲み方をしている人は認知症発症率が高くなることが、多くの研究を総合的に分析した結果で明らかになっています。認知症が心配な方は断酒を、断酒が無理なら節酒をした方がよさそうです。

 高リスク群の基準に男女差があるのは、生物学的に女性の方がアルコールに弱いからです。アルコールの摂取量を評価する際の計算式は「純アルコール量(g)=摂取量(ml)×アルコール濃度(%)×0.8(比重)」ですが、数式ではなかなか具体的な酒量を思い浮かべにくいので、参考までに高リスク群に該当する飲酒量を以下に示します。

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小田陽彦

ひょうごこころの医療センター認知症疾患医療センター長

おだ・はるひこ 1977年、兵庫県西宮市出身。兵庫県立ひょうごこころの医療センター精神科医師。神戸大学医学部卒。医学博士。神戸大学医学部精神科助教、兵庫県立姫路循環器病センター等を経て2017年4月より現職。日本精神神経学会専門医・指導医。日本老年精神医学会専門医・指導医・評議員。著書に「科学的認知症診療」(シーニュ社、2018)